クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
司法試験の勉強をしながらパラリーガルとして働き、その上事務員の仕事まで……。
今、完璧とは言えないまでも、その半分を担っている身としては、どれほど大変だったか想像は容易い。


でも、菜々子さんがあまりに見事にやって退けたから、所長は今まで代わりの事務員を採用しなかったそうだ。
菜々子さんは私の入所を、『あなたは救世主よっ!!』と、手を取って喜んでくれた。


「合コンかあ……。凛花ちゃんが来てくれた今なら行けるのに。今じゃ友人たちも飽きちゃって、話も来ないわ」


私に早い結婚の理由を訊ねてきたのは、答えが聞きたいのではなく、愚痴を言いたかっただけらしい。
私はパソコンに向き直り、デスクの上に領収書の束を広げた。


「菜々子さんが主催者になってみるとか、どうですか」


クスクス笑いながらそう言うと、「ええ?」と尻上がりの声が返ってくる。


「私が合コンの幹事に?」

「はい」

「誰と」

「ええと……」


誰、と言われても、私にも心当たりの男性なんかいない。


東雲(しののめ)先生とか、中西(なかにし)先生とか」


とっさに口にしたのは、この事務所の弁護士先生たちの名だ。
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