クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「東雲先生いる? 十時の約束なんだけど、ちょっと早く来ちゃったから」

「はい。大丈夫だと思います」


私は彼にそう返して、デスクに戻った。
東雲先生に内線電話でお伺いする横で、菜々子さんが拓哉さんに「おはようございます、朝峰さん」と挨拶している。


「ミッドナイトの件ですか? ご苦労様です」

「いやあ、どうも……」

「拓哉さん。先生、大丈夫です」


私は電話を切って、二人の会話に割って入った。
拓哉さんが、「そ」と頷く。


「じゃ、お邪魔します」


踵を返し、勝手知ったる……といった感じで、迷うことなく東雲先生の部屋の方へ歩いていく。


「はい。すぐお茶お持ちしますね」


彼の後を追って事務室を出て、給湯室に向かおうとする私に。


「あ、凛花ちゃん」


拓哉さんが足を止めて呼びかけてきた。


「はい?」


私も立ち止まって振り返る。


「東雲先生とは、二時間の約束なんだけど」

「? はい」

「その後、ランチ一緒にどう? あ。二人じゃマズいだろうから、信濃さんも一緒に」


彼はそう言って、小気味よくウィンクした。
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