クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
見抜かれる
東雲先生との面会を終えた拓哉さんと、事務所からほど近い老舗のお蕎麦屋さんに入った。
一緒に来た菜々子さんは、入店してすぐ中西先生から電話が入り、「もーっ!」と言いながら出ていってしまった。
そのため、今私は、拓哉さんと二人でテーブルを挟んで向き合っている。


知らない人ではないけど、男性と二人というのは初めてで、ちょっと落ち着かない。
ソワソワして目を合わせられずにいると、拓哉さんがくくっと笑い出した。


「な、なんですか?」


私が警戒しながら視線を向けると、口元に手を遣る。


「いや……。俺相手に緊張してる?」


意地悪に目を細められて、私は条件反射で背筋を伸ばした。


「すみません……」

「いや。俺と凛花ちゃん、大した縁でもないしね」


拓哉さんは、問いかけておいてあっさり納得してうんうんと頷く。
私はぎこちなく笑ってから、


「あの、なんで……」


思い切ってランチの誘いの意図を訊ねようとすると、二人分の舞茸天麩羅と盛り蕎麦が運ばれてきた。
早速拓哉さんが、「いただきます」と綺麗な所作で手を合わせる。
それにつられて、私も両手を合わせた。
拓哉さんが蕎麦を啜って「うん、美味い」と呟く。
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