クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
舞茸の天麩羅に箸をつけ、食欲旺盛に食べ進めるのを見て、私はひょいと肩を竦めた。
蕎麦を箸で摘まみ、もそもそと食べ始めると。


「凛花ちゃんさ」


呼びかけられ、黙って顔を上げる。


「今、幸せ?」

「え……」


不躾と言っていい、率直で脈絡のない質問に怯んだ。
拓哉さんは、ギクッと肩を動かす私に眉尻を下げる。


「いきなり誘ってごめんね。でも、一昨日会った時の作り笑いが気になったから」

「作り笑い?」


「ん」と首を縦に振ってから、再び蕎麦を口に運ぶ。
右の頬に頬張ってもぐもぐと口を動かしてから、まっすぐ私を見据え――。


「無理して笑ってたでしょ。奎吾さんと喧嘩でもした?」

「っ……」


遠慮のない指摘に、不覚にも手が震えた。
木枠のトレーに箸を落としてしまい、慌てて拾い上げる。
『そんなことないですよ』と笑って返すところなのに、顔が強張る。
それでもなんとか取り繕おうと目線を上げると、それを待ち構えていたかのように、彼と真正面から目が合った。


「俺が首突っ込むことでもないけど、凛花ちゃんは一応親族だからさ」

「…………」


私は弁解を諦めて、箸をテーブルに戻した。
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