クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
拓哉さんに弁解など通用しない。
物腰柔らかく気さくな性格で、飄々とした印象でも、彼は警視庁捜査一課のエリート警視だ。


私も詳しく知らないけど、プロファイリングに精通していると聞いた。
犯罪の性質、特徴を分析して、犯人像を割り出す。
そして被疑者の言動、顔色、表情――そういったごくわずかな変化を突いて、自白へと誘導する能力の持ち主。


『プロ』の前で、私の心理なんて丸裸に等しい。
私は居心地悪くなって、無意味に両肘を抱え込んだ。
固くなる私に、拓哉さんが目力を緩める。


「無理して笑うんじゃなく、誰かに相談して気分軽くした方がいいよ。今日はそれだけ言いたかっ……」

「私、魅力ないですか」


彼が話題を引き取ってしまう前に、私は覚悟を決めて質問を挟んだ。


「は?」

「拓哉さんと私、八歳違いです。奎吾さんよりは年が近い。拓哉さんから見ても、私に女性としての魅力はないですか?」


口にしたが最後、自分に煽られて次々と畳みかけると、拓哉さんがほんの少し虚を衝かれた表情を浮かべた。
そして。


「……もしかして俺、口説かれてる?」

「え?」


真顔で顎を摩る彼に、私の方が意表をつかれた。
拓哉さんは私に構わず、「うーん」と渋い顔で唸る。
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