クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「凛花ちゃんは魅力ありまくりで、正直俺もかなりグラッと来るけど。ごめん。俺、人妻は圏外」

「は?」

「火遊びはダメ。バレて、奎吾さんに殺されるのは勘弁……」

「あの、なにを言ってるんですか」


私がやや白い目でツッコむと、彼もヘラッと相好を崩した。


「俺と凛花ちゃんが不倫した場合の行く末だけど」

「!? ふ、不倫!?」


私はギョッと目を剥いて、素っ頓狂な声をあげてしまった。
次の瞬間ハッとして、両手で口を押さえて周りに目を走らせる。
他のテーブルにいた客が、チラチラとこちらを見遣ってるのを見て、肩を縮こめた。
拓哉さんは口元を手で覆い、笑いを噛み殺していたけれど。


「質問の答え。そんなことないよ」


目尻に滲んだ涙を指で掬って、そう言った。


「この前も言ったでしょ。大人っぽい美人さんになったねって」


話題を軌道修正されても、私は即座について行けない。
一度グッと詰まってから、


「そんなの、お世辞です」

「なんで決めつけるの」

「お祖父様も言ってました。拓哉さんは口先ばかりだって」


悔し紛れに胸を反らす。
拓哉さんは、ひくっと頬を引き攣らせた。
私は彼の反応に構わず、肩を動かして溜め息をついた。
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