クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「ただでさえ、私と奎吾さん、十歳も歳の差があるのに。私はどうしたら妻と……いえ、女と見てもらえるんでしょうか……」


今まで誰にも言えなかった切実な悩みを吐き出したら、やるせない思いが止めどなく溢れ返った。
ズッと洟を啜る私を、拓哉さんは斜めの角度からジッと見つめていたけれど。


「課が違うとは言え、奎吾さんは一応上官だし……私生活を暴くようで非常に心苦しいんだけど」


歯切れの悪い口調と言葉ほど苦しそうな様子もなく、テーブルの向こうから身を乗り出してきた。


「要は、レスの悩み相談?」


手を立てて口元を隠し、コソッと訊ねてくる。


「……は」

「奎吾さんに手を出してほしくて、そんなこと聞くんじゃないの?」

「っ……ちがっ」


私は慌てて否定しようとして、声が詰まって噎せ返った。
拓哉さんは、ゴホゴホと咳き込む私に満足げに「ふふっ」と目を細め、背を起こす。


「たっ、拓哉さんっ」


私はドンドン胸を叩いて呼吸を整えた。
茹で蛸も真っ青なほど顔を茹らせ、涙目で彼を睨む。


拓哉さんは、私の睨みをまったく気にしない。
緩くウェーブがかった前髪をザッと搔き上げ、「うーん」と唸ると……。
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