クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
彼はこの事件を通じて知り合った女性と入籍を控えているところだが、そう言えば――。


「結婚式の予定はないと聞いたが、多忙を言い訳に使ったか?」


俺がやや攻撃的に目を向けると、彼の指がピクッと動いた。


「本家の次男坊のくせに、箔がつかないだろ。叔父さんたち、よく許したな。親族以外のお偉い方への紹介はどうする……」

「ああ、最初はうるさかったよ。どこかの誰かさんが、兄貴の嫁さん候補を掻っ攫っていったせいで、長男より次男坊の俺の方が先に結婚することになったからな」


皮肉に対する嫌みか、随分刺々しく返され、グッと詰まる。
言い負かされたようで、苦々しい。
俺が言い返せないのを見て、純平はぷいとそっぽを向いた。
俺はブスッと不貞腐れて、彼の横顔を観察した。


俺たちは、父方の従兄弟だ。
同い年で、顔立ちも似ている。
そのせいで、昔から事あるごとに比較の対象にされた。
しかし、能力が拮抗したら、俺はいつも純平に敵わない。
分家の俺が評価を得るには、彼を大きく上回る能力を見せつける必要があった。


それは、彼女……凛花にも同じだった。
直接結婚を申し込むために設けてもらった形ばかりの見合いの席で、彼女が口にした言葉が、俺の鼓膜に刻み込まれて消えない。
< 43 / 213 >

この作品をシェア

pagetop