クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「……そうか? 十も十二もそう変わらない。同じオジサンの嫁なら、分家より本家の方がよかったかもしれない」

「は?」


俺が自嘲気味に呟くと、胡散臭そうに眉根を寄せた。


「本家の妻になれば、なにかと優遇されるからな」

「奎吾、まだそんなこと根に持ってるのか。令和のこの時代、本家も分家もないだろ。お前の脳味噌、何世紀前の遺物だ? 進化しろよ」


呆れ返って辛辣にツッコまれ、俺もムッと唇を曲げた。
いつも優遇されてきた立場のお前に、俺のなにがわかる。
しかし、腹立たしい言い様もまた正論で、返す言葉もない。
純平は、『やれやれ』とでも言いたげに肩を竦めて、


「ちゃんと好かれて乞われる方が、女は幸せだろうってことだよ。まあ、お前が凛花さんに懸想していたとは知らなかったがな」


不遜に腕組みをして、俺を一瞥した。


「出会った時、中学生と幼稚園児だもんな。一体お前、いつから……」

「笑いたきゃ笑え。馬鹿にしたけりゃ……」

「いつも女に淡泊だったお前が、自ら結婚を申し出るなんて意外だった。事件解決のためだと言われた方が、よほど納得がいった。それだけだよ」

「は? お前こそ一体なにを」

「あー、うるさい。いちいち突っかかるな」


遠慮なくうんざりした顔で、まるで虫を払うようにシッシッと手を振る彼に、俺も言葉をのみ込んだ。
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