クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
俺と純平は昔からこんな感じで、顔を合わせると年甲斐もなくいがみ合ってしまう。
確かにムキになって突っかかった自覚があるから、きまり悪くなって顔を背ける。
黙り込む俺に、純平は「はあっ」とこれ見よがしな溜め息を吐き……。


「お前が追ってる国際詐欺事件だよ。藤崎の政治家が一枚噛んでるそうじゃないか」


ちらりと視線を流され、俺は口を噤んだ。
純平が言うのは、今から二年ほど前に発覚した、日本の商社が巨額な資金を騙し取られたという国際詐欺事件だ。
当時取引があった香港の貿易会社のネットサーバーがハッキングされ、メールアカウントを乗っ取った人物から、ケイマン諸島の銀行口座に送金を誘導された。
商社側は、メールアカウントが旧知の担当者のものだったため、口座変更を疑問に思わず、何度かに渡り送金を実行してしまった。


よくあるサイバー犯罪で、当初はサイバー犯罪対策課が担当していた。
しかし、その口座の開設書類に大物政治家、藤崎六郎(ろくろう)のサインがされていたことが判明し、事件発覚から半年経って、二課に回ってきた。
現在、インターポールや香港警察と連携して捜査を進めている。


藤崎六郎とは、凛花の実家と縁深い人物だ。
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