クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
この俺が、何年ぶりかで会った、幼児の頃から知っている女に高揚させられるなんて信じられない。
あっさりと撃ち落され、胸をドキドキさせる自分が思春期のガキみたいで、恥ずかしく、戸惑い……こんなのほとんど初恋と変わらない。


らしくないほど弾む鼓動に混乱しながら、俺は次の瞬間、現実に直面した。
間違いなく凛花は、本家の二人、どちらかの嫁に選ばれる。
分家の俺に、出番はない。
だからと言って、凛花が人のものになるのを、指を咥えて眺めてはいられない。
二十三年間のどこかで、誰かのものだったこともあるだろう。
その見ず知らずの相手にすら、狂おしいほどの嫉妬が抑えられない――。


俺は、梗平さんの花嫁候補が本決まりになる前に、彼女との結婚を直接藤崎家に申し込んだ。
本家の人間に拮抗するだけでは、俺に勝ち目はない。
能力が必要なら大きく上回り、早い者勝ちなら先手を打ってさらに先回りするしかなかったからだ。


とにかく、凛花を奪われたくない。
その一心だった行動を、今じゃ純平に『強奪』とまで言われる。


「奪われないよう、守っただけだ」


忌々しい気分で舌打ちしたものの、俺以外の人間には到底理解できない弁解なのは自覚している。
俺との結婚が凛花の意に添わない以上、これは俺の自分本位で身勝手な独占欲。


――認めるしかない。
俺は、凛花のことになると異常になる。
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