クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「あ。ちょっと待って」


中西先生が湯呑みを取って、すっかり冷めたお茶をグイッと飲み干した。


「あー……」


野太い溜め息を零して再びソファに深く沈み、喉を仰け反らせる。
疲労困憊というよりうんざりしている様子に、私はテーブルの横に突っ立ったまま首を傾げた。
菜々子さんが、ムクッと背を起こす。


「ごめん、凛花ちゃん。私と先生に、もう一杯ずつお茶もらえる?」


彼女の前の湯呑みは空だった。


「あ、はい」


私はしゃきっと背筋を伸ばしてから、なんとなく二人を観察した。
中西先生だけじゃなく、菜々子さんもげっそりしている。
依頼人の女性の、帰りがけの様子も気になる。
難しい相談なのかな――。
部屋を出て、今度は冷たい麦茶を淹れて戻ってくると。


「うー……」


中西先生が身体を前に屈め、頭を抱え込んで唸っていた。


「え、中西せんせ……?」

「あー、凛花ちゃんは気にしなくて大丈夫。いつものことだから」


具合でも悪いんじゃ、と声をかける私にそう言って、菜々子さんがソファから立ち上がった。
私の手のトレーからグラスを取ると、腰に手を当ててグビグビと飲む。


「いつものこと……ですか?」


私は、髪を掻き毟っている中西先生を窺いながら、彼女に問いかけた。
菜々子さんは手の甲で口元をグイッと拭って、「そう」と頷き――。
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