クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「そうだよなあ。なにせ、パラリーガルにも同情の余地もないと言われるくらいだし……」

「あ、あの」


私はなんとか気を持ち直して、遠慮がちに声を挟んだ。
二人から視線を向けられ恐縮して、身を縮こめながら……。


「でも奥様は、ご主人を愛してらっしゃるんじゃないでしょうか」

「え?」

「その……調査したら浮気が発覚してショックで……。奥様の浮気はそれが原因でしょう?」


意を決して意見を述べた私に、二人が瞬きをしながら顔を見合わせる。


「奥様は、さっき結婚指輪をしていらっしゃいました。離婚調停の相談に嵌めてくるでしょうか。ご主人にお腹の子のパパにと要求するのも、本当は別れたくないからなんじゃ……」


中西先生が、眉をハの字に下げた。


「一理あるけど。それで離婚回避したとしても、この夫婦、この先どうなるかわからないよ?」

「それは……」

「うーん……でも先生。もっとじっくり、奥さんから話を聞いてみるのも手かも。どっちにしても、ご主人の方は奥さんの要求、のめないでしょうし」


二人が難しい顔で議論を始めるのを聞いて、私はそそくさと立ち上がった。


「それじゃ私、仕事に戻りますね」

「え?」

「あ、凛花ちゃ……」


揃って顔を上げる二人にペコッと頭を下げ、ドアに向かって小走りした。
ドア口で一礼して、首を竦めて外に出る。
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