クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「LINEでお訊ねしたことなんですけど……」

『あ、うん。ちょうど純平さん、帰ってきたところだから』

「……え?」

『純平さーん』


電話の向こうで、歩さんが彼を呼ぶのにギョッとして、思わず壁時計を見上げた。
午後十時。
普段の奎吾さんと比べると、かなり早い帰宅だ。
本当に、遠くで物音がする。


『今、凛花ちゃんと話してて』


歩さんの説明を耳に、私は無意識に肩を力ませた。
『凛花?』と、訝し気に返す声に続いて……。


『もしもし? 久しぶり』

「おっ……お久しぶりです、純平さん」


電話口からの応答に、私は声をひっくり返らせた。
私の反応に、歩さんがクスクス笑う声もする。
どうやら、ハンズフリーで一緒に聞いているようだ。


『凛花ちゃんの質問、直接純平さんに答えてもらった方が早いかなーと思って』

『質問?』

『凛花ちゃん、奎吾さんの好物が知りたいそうです』


電話越しの二人の会話に、私はこめかみに妙な汗が滲むのを感じた。
意味もなく身を縮めていると、純平さんが『は?』と呆れたように語尾を上げる。


『なんで俺に』

「す、すみません、すみませんっ」


私は恐縮しきって、何度も頭を下げた。


「実は、あの……もうすぐ結婚記念日で」


しどろもどろになる私に、彼も『ああ』と相槌を打つ。
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