クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
早口の小声で呟き、スーツのポケットからスマホを取り出した。
モニターに指を走らせ、インターネットで検索する。
漢字では、『李富城』と表すらしい。
「ホテルに戻ったら、インターポールに人物照会します」
国枝部長の「ああ」という相槌を聞きながら、スマホをポケットに戻す。
俺は苦々しい気分で、前の二人の後頭部を見据えた。
捜査連携と言っても、国を跨ぐと結構難儀だ。
俺たち日本側もそうだが、香港にも現地事情がある。
自分たちのホームで、俺たちが首を突っ込むのを歓迎しない。
それ故、こうしてわざわざ香港まで出向いても、なかなか情報を開示しない。
張刑事が付きっ切りでアテンドするのも、俺たちがホームを荒らさないよう、監視するため。
おかげで、初日から腹の探り合いだ。
彼らは日本語での会話が可能で、言い回しが難しくなると英語を使う。
そして、二人で相談する時は広東語だ。
厚意に甘えて日本語と英語で会話していた俺たちに、広東語はわからないと思ったのだろう。
昨夜の食事の席で、二人はそれほど声量を気にせず、今まで提供されなかったハッカーのアジトの話をしていた。
俺も部長も、日常会話に不自由しないレベルで広東語が話せる。
二人が俺たちを憚って密談していることは、全部筒抜けだ。
俺たちは暗黙の了解で、一芝居打つことに決めた。
モニターに指を走らせ、インターネットで検索する。
漢字では、『李富城』と表すらしい。
「ホテルに戻ったら、インターポールに人物照会します」
国枝部長の「ああ」という相槌を聞きながら、スマホをポケットに戻す。
俺は苦々しい気分で、前の二人の後頭部を見据えた。
捜査連携と言っても、国を跨ぐと結構難儀だ。
俺たち日本側もそうだが、香港にも現地事情がある。
自分たちのホームで、俺たちが首を突っ込むのを歓迎しない。
それ故、こうしてわざわざ香港まで出向いても、なかなか情報を開示しない。
張刑事が付きっ切りでアテンドするのも、俺たちがホームを荒らさないよう、監視するため。
おかげで、初日から腹の探り合いだ。
彼らは日本語での会話が可能で、言い回しが難しくなると英語を使う。
そして、二人で相談する時は広東語だ。
厚意に甘えて日本語と英語で会話していた俺たちに、広東語はわからないと思ったのだろう。
昨夜の食事の席で、二人はそれほど声量を気にせず、今まで提供されなかったハッカーのアジトの話をしていた。
俺も部長も、日常会話に不自由しないレベルで広東語が話せる。
二人が俺たちを憚って密談していることは、全部筒抜けだ。
俺たちは暗黙の了解で、一芝居打つことに決めた。