クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「ただいま。遅くなってすまなかった」


わずかな気配に縋り、ドアに額を預けて声を絞る。
それでも、彼女からの反応はなく……。


「……凛花、入るぞ」


思い切って宣言して、ゆっくりドアを開けた。
天井の明かりは煌々と灯っていたが、整然とした部屋はもぬけの空――いや、凛花はベッドにいた。
布団がこんもりとかまくら状態になっている。


俺に顔を見せてくれない。
『お帰りなさい』と言ってくれない。
拗ねている……いや、怒っている?


俺はドア口で足を竦ませた。
しかし、彼女を芯にしたかまくらが、カタカタと小刻みに振動しているのに気付き……。


「っ、凛花っ。具合が悪いのか!? まさか、飲みすぎたんじゃ」


俺は鋭く声を発し、ツカツカとベッドサイドに歩み寄った。
一切の躊躇なく、布団を引っ剥がした途端。


「きゃあああっ!!」


甲高い絶叫が轟き、ギクリと手を止める。
そして。


「……え?」


俺は、ベッドの上でハリネズミのように身を縮める彼女に目を瞠った。
――なんだ? これは。
確かに凛花だが、パジャマを着ていない。
黒い総レースのブラジャーとショーツだけの姿だった。
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