クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「実家暮らしの頃に。家に帰ったのに、中に入る前に力尽きて、朝まで道路で寝てたとか」

「えっ!? 怪我は? 無事だったんですか?」


素っ頓狂な声をあげる私に、頷いて応えてくれた。


「巡回中のおまわりさんが、起こしてくれて」


私はホッと胸を撫で下ろした。


「おまわりさんがいてくれてよかったです……。そっか、上には上がいるなあ」


ふむふむと思案する私に、菜々子さんが呆れたような溜め息をつく。


「そんなこと、見習わなくていいのよ。凛花ちゃんは」

「でも、菜々子さん言ったじゃないですか。羽目外して遊んだこともないんじゃない?って」

「え?」

「羽目外して遊んでみたいなんて思ったこともないけど、そのせいで、私は人より知らないことが多すぎる。痛い目見たけど、そう気付けたんです。だから、思い切ってやってみようと思って」


私は、両腕を前に突き出してグッと大きく伸ばした。
菜々子さんが、互いの視界を遮るパソコンを避けて顔を出してくる。


「旦那さんと喧嘩でもした?」


探る問いかけに、私はギクッと身体を固まらせた。


「それ、『実家に帰らせていただきます!』ってヤツでしょ」


菜々子さんは姿勢を元に戻し、椅子に大きく凭れかかって踏ん反り返る。
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