もう一度会えたなら
 その日、中島(なかしま)美紀(みき)はいつもより少し早く家を出た。
 通勤途中にあるコンビニのイートインコーナーで朝食を済ませるつもりだった。
 
 まだひっそりと静まり返っている商店街に響きわたるドアベルの音。
 押し開けられたドアから「いってきます!」と作業着姿の男性が出てきて、美紀の行く手を遮った。
 ふと目に留まったのは、『喫茶まほろば』の電飾看板。
 普段は何の気なしに通り過ぎるのだが、開いたドアからふわりと漂ってきた芳しいコーヒーの香りに吸い寄せられるように、美紀もドアベルを鳴らした。

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