ワケありイジワル王子はツンデレ姫様を溺愛したい。
恋をする為には

ファンクラブ

【梨愛side】


「純麗、話がある!!」




そう言って呼び出したのは、お馴染みのバルコニー。




「今度はどうしたの?」




つまらなそうに聞いてくる純麗。




もう!




一大事なんだって!!




「純麗、梨愛………」




少し声のボリュームを下げて口を開く。




「亮に、告白された。」




ね!



ほら一大事でしょ!?




と、目で訴えるも、純麗は全然驚いていない。




しかも加えて、純麗はこんな事を言った。




「やっと告白したんだ、水野くん。」




「…………え!?」




想定外の返事に、梨愛は驚きを隠せなかった。




「純麗知ってたの!?いつ教えてもらったの!?」




純麗への疑問が止まらない。




「いや、見てたら普通に分かるよ。あんな大胆にアピールする男子そうそういないよ?って、梨愛に話しても分からないわね。」




え、今梨愛さらっとディスられた?




「で、返事はどうしたの?」




「………断った。」




「そう。」




その後純麗は、ただただ黙っているばかりで、ティーカップを片手に本を読んでいた。





純麗気づいてたのか………




なんかショック。




うう………なんでか分からないけどめちゃくちゃショック!!




そんな事を思っている時、事は突然訪れた。




「あなた、桃瀬梨愛さんよね?」




後ろから声がして振り返ると、そこには5人の女子生徒が。




さっき話しかけてきたリーダー格の3年生を筆頭に、2年生と同い年の1年生が2人ずつの構成。




「はい………3年の先輩が私になにか?」




「あら、わたくし達のお話をそんなにすぐ聞こうとして下さるなんて。立ち話もなんですので、わたくし達の部屋にいらしてくれない?」




部屋………か。




この学園には、それぞれ部屋があり、元々は一人一部屋だが、複数人の部屋を足し算した広さにし、共用の部屋にすることも出来る。




“わたくし達の”という事は、共用にしたのだろう。




でも………何で梨愛なんだろう?




梨愛この先輩と話したことあったかな?




まあ、でもいっか。




大事な話なら聞かないといけないし。




「分かりました。早速お邪魔させてもらっても?」




すると先輩達は、にっこり笑ってこう言った。




「ええ、もちろん!大歓迎ですわ!」




そして、彼女らの部屋と思しき部屋の前に着いた。




「どうぞ」




「ありがとうございます。」




わ、すごい内装。




シャンデリアがいくつもあって、部屋が大きいため家のようにも見える。




「桃瀬さん、わたくし達はあなたに大事な話があってこちらに来ていただいたの。」




大事な話………案の定。




でも、内容はまったく想像がつかない。




「大事な話とは、一体なんのことでしょうか?」




そう問いかけると、彼女達の態度は一変した。




「はあ?あんた自覚ないわけ?ふざけないでよ。」




「え………」




思わず声が出てしまう。




「え、じゃないわよ。ここ最近ずっと清美様に付きまとわって!それに水野様まで。目障りなのよ!!」




そう言って髪を引っ張られる。




「いたっ………はなし、て………」




今清美って言った?




それに亮まで………




「不細工な顔だこと。前のように足も踏んづけてやるわよ?」




えっ、あの時の………この人達の仕業だったの!?




「やめ、てっ………」




「うるさいわね、喋らないで!!」




すると顔をぐんと近づけてきて。




「ああ、一応名乗っておくわ。わたくし達は清美様のファンクラブのメンバー。そしてわたくしがリーダー。一応言っておくと、メンバーはこの4人だけじゃなく、この学園の女子の約半数が入ってるの。」




梨愛の髪を引っ張ったまま、話を続ける。




「ファンクラブにはいくつかの規定があるの。1、抜けがけをしないこと。2、プライベートには踏み込まないこと。3、彼らにバレないよう、秘密裏に活動すること。そして4、あんたみたいな邪魔な虫がいたら排除すること。」




梨愛は、彼女達に気圧され、その場から動けないでいた。




「今回は見逃してあげるわ。でも、次また清美様の邪魔をするような事をしたら、今回みたいな軽いものでは済まないから。それが分かったなら今すぐこの部屋を出ていって。汚れるから。」




ここに座り込んでおく訳にも行かないため、震える足の最後の力を振り絞り、その部屋を逃げるようにして出た。





次の日。




あの後、梨愛は体調が悪くなり授業に出られなかった為、早退した。




今日は無事に来れたけど、パパやママに心配かけちゃったな。




体調は良くなったものの、昨日のことが頭から離れず、全く眠れていない。




だから、とっても眠い!




昨日の人達………タタのファンクラブって言ってた。




梨愛は、タタや亮に近づいたら酷いことをされるんだよね。




無意識に唾を飲む。




タタ達に迷惑をかけるわけにもいかないから、昨日の事は黙っておこう。





話してしまうといけないから、梨愛はタタや亮の姿を見つけたら、すぐその場から距離を取るようにしていた。




ふーっ、今日は無事にタタと話すことは無かった!!




そして、梨愛が門の前でお迎えを待っていると、会ってはいかない人に会ってしまった。




………タタだ。




「梨愛ちゃん、もう帰るの?迎え待ち?」




「う、うん………」




周りから見て話しているように見られない為、梨愛はタタの顔を見ずにやり取りをする。




「そっか。僕も一緒に待つよ。」




!それはまずいの!!




「え、えっと………梨愛、ちょっと風邪気味だからあまり近づかない方がいい!うん!!」




そう言って帰らせようとしても、タタは梨愛に甘い行動をしてくるばかり。




タタは、自分の着ている制服を梨愛にかけてくれたのだ。




「えっ………あと、えと……ありがとう。」




「どういたしまして。」




違う!




こうじゃないの!




梨愛は1人戦っていた。




この優しすぎる友達をどうやって帰させるか、と。




でも、時すでに遅し。




絶対タタのファンクラブの人達に見られたよ!!




学園内の半分なら………ほぼ100パーセント!




ああ、梨愛、終わった………




そう1人で嘆いていると、やっとお迎えの車が来た。




やった!




梨愛は学園から逃げるようにして出た。




明日………梨愛何されるのかな?




なるべくファンクラブの人を見つけたら、近づかないようにしよう。




「はあ…………」




ただただ、ため息が出るばかり。




窓に反射している自分の顔を見て思う。




ああ………梨愛の可愛い顔が台無し。





さらに次の日。




梨愛は、朝から作戦通りファンクラブの人達を避けて歩いた。




この時だけは、校舎が大きくて良かったと思った。




教室への道がいくつもあるから。




よし、無事に教室到着!!




これでもう梨愛教室出ないよ!




そうしたら、連れていかれることもないよね。




と思ったのに。




「失礼します。3年C組の鈴北彩乃です。桃瀬梨愛さんのクラスはここでしょうか?」




げっ、昨日のリーダー……。




「桃瀬さん、呼ばれてるよ?」




え、あ、これじゃ断れない!!




みんなを利用して逃げられないようにしたんだ。




む、あのリーダーやるな。




はあ、梨愛何されるんだろう。




「おい、3年の鈴北先輩だ。美人〜。」




「1回でいいからあんな美女と付き合ってみてー!」




クラスからはそんな声も聞こえた。




「あの、何かご用でしょうか………」




「ええ、ちょっと来てくれるかしら?」




「は、はい…………」




梨愛は、そのまま人気のない廊下へ連れていかれる。




「ねえ、わたくし忠告しましたわよね?なのにあんなに堂々と………!あんたは約束を破ったの。しっかり罰を受けてもらうわ。今日の放課後わたくし達の部屋の前に来て。」




そう言って帰って行った。




今日、あの部屋の前に………




嫌だ、行きたくない。




あ、逃げればいいんだ!




部屋には行かず、帰ろう。




そんな軽い作戦で逃げようとした、梨愛が浅はかだった。




放課後玄関へ向かうと、そのファンクラブのリーダー達がいた。




「あら、どこに行くつもり?」




「っ…………」




もう、逃げられない。




梨愛、逃げようにもドジだからすぐこけちゃう。




「来なさい。」




逃げる方法を考える間もなく、梨愛は手をがっしり掴まれ、校舎の裏へ歩かされた。




ここは………




「ここ、知ってるでしょう?獣が出ると噂の倉庫。あんたにはこの倉庫に入ってもらうから。」




そして梨愛は倉庫へとドンッと押され、手に手錠までかけられた。




手錠なんて、どこで………。




そう思った時には倉庫の鍵をかけられていた。




辺りは真っ暗で、何も見えない。




怖い。




「いやっ、出して!お願い!!」




そう呼びかけるも返答はなく、もうすでに彼女達は帰ってしまったようだった。




「うそ………嫌だ、嫌だ………」




梨愛は怖さのあまり泣いてしまう。




お願い。だれかここから出して。




そう願ってから、どれくらい経っただろう。




多分、1時間くらいかな。




もう、涙も枯れてしまった。




誰か、助けて…………


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