ワケありイジワル王子はツンデレ姫様を溺愛したい。

知らない女の子

【梨愛side】


「ん…………」




ふと目を覚まし、目に飛び込んできたのは心配そうにこちらを見ている両親の顔。




「梨愛!」




「梨愛ちゃん、目を覚ましたのね!!」




「ぱ、ぱ?まま………?」




体を起こそうとすると、頭が激しい痛みに襲われる。




「っ………」




「梨愛、まだ寝てなさい。梨愛は風邪をひいているんだから。」




風邪?




あ、梨愛監禁されたんだ。




でも………どうやってここまで?




というか、なんで倉庫から出れたんだろう?




思い出せない。




梨愛気を失ってたのかな。




すると、パパが梨愛の疑問を読み取ったかのように説明し始める。




「梨愛、梨愛は学園の敷地内に監禁されてたんだ。覚えているか?」




梨愛は頷く。




「それで、帰ってこないからパパが亮くんの家へ連絡を入れたんだ。そうしたら、亮くんがすぐに学園へ行って、見つけてくれたんだ。」




あ………思い出した。




亮、すごい謝ってたな。




亮は何も悪くないのに。




「パパ、亮は?」




「ああ、亮くんなら今学園だ。平日だからね?それと。」




ん?それと?




「梨愛、亮くんと婚約する気はないか?」




「………へ?」




ちょ、ちょっと待って!?




梨愛が亮と婚約!?




考えたことも無かった…………




まあ、パパが急にこんな事を言い出した理由は何となくわかる。




「亮くんは梨愛の事を助けてくれた。だから、亮くんになら梨愛を任せられると思ったんだ。」




やっぱり。




パパもママも過保護で、梨愛がちょっと怪我したくらいで医者を呼ぶ程の心配性。




だから、梨愛の事を助けてけれた亮と、という事だ。




でも………タタが………




って、なんでタタの事考えてるの?




タタは、関係ないし……




「パパ、梨愛は亮の事そんな目で見たことないよ?」




そう言うと、パパとママはなんだか驚いている。




「本当に気づいてないんだな………」




「ええ。」




ん?




何の事?




「それに、亮には好きな人がいるかもしれないよ?そうなら、亮が可哀想だよ。」




新しく、私じゃない好きな人が。




「いや、亮くんにとって今は絶好のチャンス何だけどな………」




「何か言った?」




「なんでもないよ。それで、梨愛はこの婚約はしたくないって事で、いいのかな。」




「…………うん」




多分、亮もこの方がいいよね。




「分かった。それじゃあ、梨愛は休んでなさい。」




そう言って、パパとママは部屋を出ていった。







2日後。




梨愛、全回復!




高い熱を出していたのに、梨愛の調子は2日でとても良かった。




パパとママにはもう1日休む事を提案されたが、授業に遅れをとる訳にはいかなかった。




そして、亮にもお礼を早く言いたかった。




学園に着き、早速亮の元へ向かう。




「亮!」




亮の姿が見え名前を呼ぶと、亮はすぐにこちらに気づいてくれた。




「梨愛!おはよう。もう体調大丈夫なのか?」




「うん。亮、助けてくれてありがとう。」




「ああ………って、わざわざ礼言う為に来たのか?」




「え?うん、そうだけど………?」




なんで驚くの?




これくらい普通でしょ。




すると、亮はクスッと笑ってこう言った。




「梨愛が無事でいてくれるならそれでいい。無理すんなよ。」




そう言って梨愛の頭を撫でてくれる。




嬉しいよ、嬉しいけど!




「髪がぐっちゃになる!」




「だーいじょうぶだよ、また結べばいいだろ?」




「もう!そういうことじゃ無い!」




亮は笑っているけど、急に悲しそうな瞳をして。




「梨愛…………守ってあげられなくて、ごめんな。」




っ………




「なん、で?なんで、亮は悪くないし、人はいつも守れるようなスーパーヒーローじゃ無いんだよ。だから、そんなに悲しい目をしないで。」




亮は、優しい。




いつも、小さい時から梨愛の前に立ってくれる。




亮は、元々引っ込み思案なところがあったけどね。




「でもね、亮。梨愛にとって亮は、もうヒーローなんだよ。」




「っ………!」




「亮、ありがとう。梨愛、亮の事大好きだよ!」




梨愛に寂しい雰囲気は似合わないから。




それに亮も。




だから、いつも笑顔でいようね。




「っ……ああ。俺も、梨愛の事愛してる。」




愛してる………って、なんだか恥ずかしい。




「あ、ついでにこのまま俺の彼女になってくれてもいいんだけど?」




「もーう!今その話じゃないでしょ!?」




なんやかんやで、梨愛は亮と笑顔のままお別れが出来て、それぞれの教室へ戻った。




なんだか、最近授業つまんない。




梨愛は、中学校の時点で難関大学の勉強にまで手をつけていたため、学園の授業はもう飽きてしまっていた。




だから、最近は授業中に秘密で英語以外の学習していない外国語の勉強をしていた。




すると、隣から流暢に英語を喋っている声が聞こえてきた。




綺麗な声………




確か、あの子は最近転校してきたばかりの帰国子女、葉月ミユちゃん。




英語を喋っている彼女に、クラスの男子は釘付け。




長いまつ毛にぱっちり大きな瞳。




そして桃のように少しピンクに染まった頬。




ボブカットの綺麗なブラウンの髪。




スタイルの良さもそうだった。




それに勉強も出来る。




男子が釘付けになるのも分かる。




でも…………




梨愛の方が、可愛いもん!




そう勝手にライバル視している梨愛は、次の日衝撃の事実を知ることとなった。







次の日。




梨愛は、野暮用で職員室に向かっていた。




すると、中庭がふと目にとまる。




真ん中にある綺麗な緑色の葉の木。




そしてその下のベンチに座っている男女。




あれは………




タタと、葉月さん?




笑顔で話している。




なんで2人が一緒に………




それより、梨愛はどうしてこんなにも胸が痛いの?




何故か分からないけど、嫌だ…………




梨愛は、重い足取りで職員室へ逃げるように向かった。




その後、教室に戻るとクラス中がタタの話で持ち切りだった。




梨愛以外にも、タタと葉月さんが話しているところを見た人がいるのだろう。




そして女子は大騒ぎ………




男子はそんな女子にうんざりと言った感じだった。




「どうして転校生の葉月さんと清美様が………」




「もしかしてお付き合いなされているとか……」




「いやぁ!」




「でも、お似合いですわよね………」




数分たってもその話が終わる気配は無い。




そうだよね、みんなタタの事好きだもんね。




キュッと胸が締め付けられる。




…………嫌だ、なあ………




独占したい、という気持ちが自然と湧いてくる。




ここでやっと、梨愛は自分の気持ちに気が付いた。




梨愛、タタの事が好きなんだ。







梨愛は、帰り際にタタに会った。




「あ、た、タタ………もうタタも帰るの?」




「うん、帰るよ。」




「そうなんだ…………」




葉月さんとタタは…………どういう関係なの?




どうして2人で中庭にいたの?




聞けない。




この質問をする事の意味を拒んで、口が動かそうとしない。




胸が苦しくて、タタの顔を見れない。




「リアちゃん?」




「あ、タタごめん。梨愛もう帰るから………っ」




帰ろうとしても、タタに後ろから手を引かれて。




どうして止めるの?




梨愛、今日おかしいっ…………




「………離して。」




「嫌だ。リアちゃんどうしたの?今日………何か嫌なことでもあった?」




っ……聞かないで。




「別に、無い………」




「じゃあどうして………」




タタの事を好いてしまうつもりなんか、無かったのに。




「そんなに悲しそうな顔をするの?」




…………言えない。嫉妬だなんて。




梨愛は、何も言えずに下を向く。




すると何故か視界がぼやけて。




「リアちゃ…………」




「梨愛!!」




声がした方に顔を向けると、そこには亮がいた。




「なんで亮が………」




その問いかけに亮が答える様子はなく、ズカズカとタタの方へ向かう。




そして胸ぐらをつかみ。




「おい、何梨愛の事泣かせてんだよ。」




「………!!」




亮、何言って………




「ち、違うよ亮!タタは何も悪くない………梨愛が悪いの………っ」




目から涙が溢れて、声も震える。




タタ、ごめんね。




梨愛のせいで………




梨愛はその場にへたへたと崩れる。




「梨愛!?」




「リアちゃん!」




すぐに2人が駆け寄ってきてくれる。




どうしてそんなに優しいの?




梨愛はタタの事が好き。




でも、そうしたら亮は………




幼なじみっていう大切な関係が、壊れるかな?




「大丈夫か?」




そう心配してくれるも、梨愛は涙が止まらず喋ることが出来ない。




すると、亮が梨愛の事をお姫様抱っこで、前助けてくれたように、優しく包み込んでくれる。




その後亮はタタの事を睨んで。




「今回も、お前じゃなかったな。」




そう言って、亮は自分の家の車に梨愛を乗せて、気を使ってくれたのか、純麗の家まで送ってくれた。




車を降りる時には、




「気をつけろよ。」




そういつもの言葉を言って、優しい眼差しを向けてくれた。




梨愛が純麗の家に入ると、純麗が2階へと続く階段から急いで駆け下りてきてくれた。




「梨愛っ………」




「純麗………」




梨愛は、安心からかさっき涸れてしまっていたと思っていた涙が、瞳から落ちた。




「梨愛、部屋へ行きましょう。」




そうして、梨愛は見慣れた純麗の部屋へと足を踏み入れる。




「純麗………梨愛、タタの事が好き………みたい。」




少し目を見開くも、純麗は梨愛の話を真面目に聞いてくれる。




「ええ。それで、梨愛が泣いている理由は?」




あれ?




あまり驚かない…………




「梨愛、私は梨愛の事ならなんでもお見通しよ。」




うん、確かにそうだ。




純麗、こうして梨愛の為に時間を割いてくれて、ありがとう。




「今日、タタが葉月さんと一緒にいる所見て………葉月さん美人で頭もいいから、タタは葉月さんの事が好きなのかな……って。」




きっと、そうだ。




梨愛よりも葉月さんの方が優れてるんだから、当葉月さんの事を選ぶに違いない。




「………はあ。」




純麗は、何故かため息をした。




なっ………話ちゃんと聞いてくれるんじゃなかったの!?




「梨愛の無自覚め〜!」




え、無自覚?




違うよ。




タタは葉月さんの事が好き。




それが事実だと言うことだけ。




でも………それが梨愛にとっては辛い。




「それに前、亮に告白されたから、梨愛がタタの事好きって知ったら、前みたいに仲良くしてくれなくなるかもしれないのが怖くて………」




「なるほどね。でもね、梨愛………」




純麗は、まるで年上かのような大人びた瞳で梨愛に言う。




「私は、水野くんが梨愛の事嫌いになるなんてこと、ないと思うわ。」




「そう、なのかな………」




「ええ、だって、梨愛のこと好きでいてくれているんでしょう?」




「……うん。」




梨愛は顔を赤らめて言う。




「純麗、梨愛決めた。タタに告白する。」




すると、純麗は本当のお姉さんの様な優しい顔をして、にっこり笑った。




そして、梨愛の事を抱きしめた。




「す、純麗!?」




「ふふ………なんだか、妬いてしまう。清美くんに。梨愛にも、好きな人が出来たのね……」




純麗…………




「純麗、ありがとう。純麗は梨愛にとって1番のお姉ちゃんで、友達だよ。」




「ええ、私もよ。」




そうして、梨愛は純麗の家をお暇した。




「純麗、相談のってくれてありがとう!!あ、それと。純麗、カウンセラーとか向いてるんじゃない!?いや、向いてる!」




そう言うと、純麗はクスクス笑って。




「ふふ、何を言い出すのかと思ったら。梨愛、帰り気をつけてね。」




「もう!車だから大丈夫だよ!」




こんな、他愛も無い会話をして。




梨愛とタタの物語を、意地でも作ってみせる!



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