ワケありイジワル王子はツンデレ姫様を溺愛したい。
好きの気持ち

文化祭

【梨愛side】


た、た、タタに……お、おおおでこに……き、き、き……




「うわあーー!!」




叫んでからすぐにハッとする。




「桃瀬さん?授業中です、静かにしなさい。」




「す、すみません………」




屋上での事件から約1週間。




まだ梨愛は“あの”出来事が忘れられない。




しかもその後タタが梨愛をお姫様抱っこしたまま廊下を歩くし……女子の声で耳が壊れそうだった……。




ずっと梨愛の様子がおかしいから、純麗は何があったのかずうっと聞いてくる。




でもあんな事されたとか……言えないよ!!




それに最近女子からの視線が痛い。




何も無いといいけど……。




そして4時間目の学活の授業が始まった。




「今から2ヶ月後にある文化祭の出し物などを決めていこうと思います。じゃあ学級委員は前に出て。」




その先生による手短な説明の後、教室はライブ会場のように湧き上がった。




いくら品のあるお金持ち学校とはいえ、行事ごとに目がないのは他と同じ。




「ヨッシャーー!!」




「何になさる?クラスの出し物!!」




「やっぱりカフェは人気だよなー。」




「ここはいっそお化け屋敷とか……」




クラスは学級委員を差し置いて、その手の話題で持ち切り。




文化祭……梨愛文化祭好き!!




「みなさーん、静かにして下さーい。」




「ーーシーン……。」




「では、皆さんが1番気になっているクラスの出し物から決めましょう。何か意見がある人は挙手をして発言を。」




「はーい!」




早速複数人が手を挙げた。




「じゃあはい、園田さん。」




「私執事喫茶かメイド喫茶がいいでーす!!」




その意見に同意の声があがる。




「私も賛成ですわ!!」




「俺もー。」




「えー、俺やだ。」




「じゃあ瀬野くん。」




「俺お化け屋敷がいいー。」




お、出た。お化け屋敷。




梨愛はー、どちらかと言うと喫茶の方がいいかな。




「じゃあ他に意見は。」




誰も手を挙げるものはおらず、さっき挙げていた他の者は同意見だったようだった。




「では多数決をとります……の前に、メイドと執事どっちにするかの多数決をとります。」




結果はメイド喫茶の方が多かった。




ていうか……お化け屋敷か喫茶で先に多数決取れば良くなかった?




「えー、ではメイド喫茶かおばけ屋敷。多数決をとります。」




結果は誤差でメイド喫茶が勝利。




喫茶に決定か……って、メイド喫茶ってことは梨愛もメイドの服着るの!?




「男子がメイドやる訳にはいかないので男子は厨房が主に活動場所になると思います。それで女子!このクラスの3分の2くらいの女子にはメイドをやってもらいます!!ではメイドやりたい人〜。」




ざっと10人くらい。




じゃあ……あと数人はメイドやらなきゃダメなの?




梨愛……いやだ〜。




「じゃあ少し人数が足りないので残りの女子でジャンケンして、半分メイド、半分厨房の手伝いをしてもらいます。ジャンケンで負けた人がメイドです。」




よし!梨愛絶対に勝つ!!




「せーのっ、ジャンケンポンッ。」





見事に負けた。




ああ〜、何でいつもは勝てるのにこういう時だけ負けるの!?




うう〜。




メイド服嫌だあーー!!




昼休憩。




「もう、梨愛!決まったことなんだからしょうがないでしょう!?」




むう。




「いいよね純麗はジャンケン強くて!負けたこと無いんだもんね!!ふんっ。」




「はあ、もう………」




そう、純麗はジャンケンで負けたことがない。




だから何か1つのものをかけてジャンケンで勝負する時は、必ず純麗の方が勝ってしまう。




だから梨愛はへこんでばかり。




「梨愛はメイド服の何が嫌なの?」




何がって……




「そんなの決まってるじゃん!!黒と白で色がモノトーンだし頭になんか変なやつ付けないとだし“ご主人様ぁ”なんて言わなくちゃならないんだよ!?」




「ああ……ご主人様はね……」




ほら!純麗だって嫌がってる!!




うう〜、なんで喋ったこともない男にそんな事言わなくちゃいけないの……。




……もし、もしも相手がタタだったら梨愛は……言えるのかな。




……いやいや!タタだって仮を返したくてプレゼントあげたけど、それ以外には何も無いんだから……変に意識しちゃ、ダメ!




よし、文化祭にむけて頑張る!!




「あー!でもメイドも頑張らなくちゃならなくなる!いーやーだー!!」




「何考えてたのか知らないけど、清美くんと何かあったのは確かのようね……」




そんな梨愛の様子を見て純麗がそんな推理をしてたなんて、梨愛は知る由もなかった。





1週間後。




一昨日に採寸したから……今日メイド服渡されるのか。




タタのクラスは何かコスプレして写真撮る、みたいなやつって、純麗が言ってた。




タタがコスプレするのかな……って、なんでタタのこと気にしてるの、梨愛……。




最近梨愛おかしい。




……まあ、気にすることないよね!




そんなポジティブ思考で廊下を歩いていた梨愛の前に、ある1人の男子生徒が現れた。




「あ、亮!!」




「おお、梨愛。お疲れ。」




「亮もお疲れ様!」




亮……こと水野亮(みずのりょう)は、梨愛の自慢の幼なじみで唯一の男友達。




純麗と一緒で文武両道。




オマケ……というには勿体ないほど顔がいい。




親同士が古くからの友達で、家が近くなこともあり、幼い頃からよく遊んでいた。




学園に入ってから会ったのは初めてかな。




「ねえねえ、亮のクラスは何するの?」




「………っ」




早く知りたくてつい顔を近づけてしまった。




近づけるっていても梨愛の身長だと……あ、何でもない!!




それにしても、なんか亮顔赤い?




「亮、顔赤いよ?大丈夫?」




顔色が気になって、更に顔を近づける。




あ、更に赤くなった。




もしかして熱あるの!?




確認のために、ジャンプして肩に抱きついて、梨愛のおでこと亮のおでこをくっつける。




「ちょ、おま……梨愛!!うわっ」




ドテッ。




梨愛と亮はバランスを崩して、梨愛が亮の上にくる体制になった。




いたた……でも、




「熱は無い!!」




確認できた!……でも、無いなら何で赤くなったのかな?




「って……」




ん?あ!亮が下敷きになったままだった!




「亮だいじょ……」




「梨愛!怪我ないか!?痛いところは!?」




「え?無いけど………」




「よかった……」




亮、自分よりも梨愛のこと心配して……




「ふふ、あはっ」




「な、何がおかしいんだよ。」




「いや、だって……自分より梨愛の心配するんだもん!亮って昔からずっと優しいね!!」




そう、亮は優しくて明るくてかっこよくて、友達がいっぱい。




「っ………ばーか、優しいのは梨愛限定だっての。」




「え?何か言った?」




「いや、何でもねーよ。それで………って、何でさっきあんな近く……っ」




急にあわてて……あ、亮さてはさっきまでの事忘れてたな?




もうっ。




「亮のクラスは文化祭なにするのか聞いてたの!!」




「え?いや、そこじゃなくて……ま、いいか。」




何よ……なんか隠してるみたいで嫌だ。




「俺のクラスはお化け屋敷だ。」




あ!亮のクラスがお化け屋敷なんだ!!




「梨愛は?」




「梨愛?梨愛のクラスはね、メイド喫茶!!」




「は!?」




急に亮が声を上げる。




どうしたの、急に……




「メイドって……梨愛がメイド服着るのか!?」




「え?うん、そうだよ?」




何当たり前のこと聞いてるの?




やっぱり、亮おかしい。




「………梨愛、今すぐ担当を厨房に変えてもらえ。」




「何で?」




「何で、って………はあ、これだから無自覚は!!とにかく!ダメだ!俺が許さない。」




「ええ!?」




梨愛だってメイド服は嫌だけど……




「いくら梨愛にメイド服が似合わないからって、そんな事言うのは良くないよ、亮!!」




「は!?いや、そうじゃなくて………」




何?




梨愛から言い逃れは出来ないんだからね!!




梨愛はビシッと亮の事を指さして言う。




「だってさっき、亮、梨愛のこと無自覚って言ったよね!!梨愛が似合わないことを自覚してないって意味で言ったんでしょ!?」




もうっ!相手が亮でも怒っちゃうもんね!!




そして頬をぷくーっと膨らませる。




「っ………梨愛、その顔やめてくれ……俺が、ヤバいから……」




あー!!




またこの顔が醜いみたいに言うんでしょ!!




「そんなにこの顔が酷いなら、もっと最初から言ってくれれば……」




「違う!」




亮の真面目な声に、肩をビクッと震わせる梨愛。




ちょっと、言いすぎたかな……謝ろう。




そう思った時、亮が梨愛に謝った。




「ごめん、怖がらせたかったんじゃなくて……さっき梨愛にメイド服やめろって言ったのは……り、梨愛が可愛すぎるから……メイド服着たら俺が、ほんとヤバいから……って意味で、その……」




次第に声が小さくなっていく亮。




「え?」




梨愛が、可愛すぎる?




あ〜、なるほど!




「もう!亮可愛い!!梨愛が可愛いって?なら亮、梨愛のクラス見に来てよ。梨愛がとびっきり可愛く言ってあげるから。」




そして亮の腰に手を回し、背の高い亮を見るため顔を上にする。




つまり、梨愛は亮を抱きしめた。




「ご主人様ぁ、って。」




そしてニコッと笑って見せた。




これで、見に来てくれるよね!




いや〜、お店のお客さん集めるとか、梨愛優秀!




「り、梨愛っ。おま、意味分かってな……」




亮は手で口元を隠し、赤い顔を梨愛に見せないようにしている。




でもそれがどんな意味でしていることなのかは、天然の梨愛には分かっていない。




亮はもう梨愛への気持ちを語るのは諦めたようだった。




「はあ………分かったよ、見に行ってやる。」




「え!ほんと!?」




梨愛が聞くと、亮は優しく笑ってこう言った。




「ああ、その代わり……俺に1番の接客しろよ。他の男にはしないで。」




もちろん!




「うん!!分かった!!」




「まあ、この意味も梨愛は分かってないんだろうなあ。」




「うん?」




「何でもない。」




何か今日ボソッて喋ること、多くない?




それより………




「あ!梨愛メイド服取りに行くんだった!!急がないと。じゃあね、亮!!」




「ああ、またな。足元、気をつけろよ。」




もー、亮心配性なんだもん。




「分かった!またね!!」




そうして距離が開いていく中、亮がこんな事を言っていた。




「早く気付けよ、ばか梨愛。」




………なんて、走っている梨愛には知る由もない。


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