8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
自分たちとは違う時代に生きた、女王。自分の王国の終わりを、どのような気持ちで受け止めたのだろう。あるいは、そんなことを考える間もなく、逝ってしまったのかもしれない。
「もし、本当にグロリアさんの骨なのだとしたら、これはチャドに返すよ」
『オリバー』
チャドは目の前に置かれた白い石に手を当てる。
何か感じるものがあるのだろうか。表面をなぞるように手を動かした後、彼はその石を抱きしめた。
『……グロリア』
愛おしさを感じさせる声は、オリバーの胸に切なく響く。彼が守りたかったのは、きっとこの土地でも王国でもなく、彼女ひとりだったのだ。
その時、馬車の音がした。
『みんな、隠れろ!』
ドルフの指示に従って、オリバーを筆頭に岩陰に身を寄せる。
やって来た馬車は、鉱山の入り口で止まった。
降りてきたのは男が三人。カンテラを掲げ、ツルハシやハンマーといった工具を持っていた。
「あの人たち、こんな夜に何をする気なのかな」
「しっ」
小声でアイラが聞き、オリバーは人差し指を立てる。
男たちは、鉱山を階段状に下りていき、横穴をのぞき込みながら話していた。
「ここに埋めろっていうのか? そんなことをして意味があると思うか?」
「仕方ないだろう。領主様の命令だ」
「わざわざ一度取った鉄鉱石を、埋めたところで、ばれるに決まっているんじゃないのか?」
不穏な内容だ。オリバーがチャドを見ると、彼は怒りで体を震わせていた。
「明日の地質調査に、ひとり領内のものを紛れ込ませるそうだ。そいつに発見を誘導させるつもりらしい。鉄が出なければここは廃坑になるからな、領主様はそれを恐れているようだ」
「だが、本当に採れなくなってきただろう」
「それでも、ここで見放されれば国家からの補助金が打ち切られる。領主様としては可能性を繋いでおきたいんだろう。私財もだいぶ投入したようだからな」
どうやら彼らはベンソン伯爵の手のものらしい。
「ねぇチャド、ここってこれまでそんなに鉄が採れていたの?」
「ああ。鉄は、あの時に降って来た隕石に、多く含まれていたようだ。この土地で採れていたのは鉄隕石というものだな。その多くを採りつくした今、これ以上の採掘は意味がない。だからさっさと諦めればいいものを……。たわけが、さんざんこの土地を荒らしておいて、まだそんなことを言うのか』
「もし、本当にグロリアさんの骨なのだとしたら、これはチャドに返すよ」
『オリバー』
チャドは目の前に置かれた白い石に手を当てる。
何か感じるものがあるのだろうか。表面をなぞるように手を動かした後、彼はその石を抱きしめた。
『……グロリア』
愛おしさを感じさせる声は、オリバーの胸に切なく響く。彼が守りたかったのは、きっとこの土地でも王国でもなく、彼女ひとりだったのだ。
その時、馬車の音がした。
『みんな、隠れろ!』
ドルフの指示に従って、オリバーを筆頭に岩陰に身を寄せる。
やって来た馬車は、鉱山の入り口で止まった。
降りてきたのは男が三人。カンテラを掲げ、ツルハシやハンマーといった工具を持っていた。
「あの人たち、こんな夜に何をする気なのかな」
「しっ」
小声でアイラが聞き、オリバーは人差し指を立てる。
男たちは、鉱山を階段状に下りていき、横穴をのぞき込みながら話していた。
「ここに埋めろっていうのか? そんなことをして意味があると思うか?」
「仕方ないだろう。領主様の命令だ」
「わざわざ一度取った鉄鉱石を、埋めたところで、ばれるに決まっているんじゃないのか?」
不穏な内容だ。オリバーがチャドを見ると、彼は怒りで体を震わせていた。
「明日の地質調査に、ひとり領内のものを紛れ込ませるそうだ。そいつに発見を誘導させるつもりらしい。鉄が出なければここは廃坑になるからな、領主様はそれを恐れているようだ」
「だが、本当に採れなくなってきただろう」
「それでも、ここで見放されれば国家からの補助金が打ち切られる。領主様としては可能性を繋いでおきたいんだろう。私財もだいぶ投入したようだからな」
どうやら彼らはベンソン伯爵の手のものらしい。
「ねぇチャド、ここってこれまでそんなに鉄が採れていたの?」
「ああ。鉄は、あの時に降って来た隕石に、多く含まれていたようだ。この土地で採れていたのは鉄隕石というものだな。その多くを採りつくした今、これ以上の採掘は意味がない。だからさっさと諦めればいいものを……。たわけが、さんざんこの土地を荒らしておいて、まだそんなことを言うのか』