8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
『アイラ。オリバーも怪我しているよ』
「えっ、これはもう大丈夫」
まさかの反撃だ。オリバーは焦って傷口を隠す。
「駄目よ! 見せて、見せて」
『オリバーもしみるの、つけてもらいなよ!』
急に元気を取り戻したリーフェに乗りかかられ、オリバーは仕方なく、アイラの治療を受け入れる。リーフェが嫌がるのも道理で、塗られた瞬間、背筋がぞわりとするような痛みが襲ってきた。尋常ではなくしみる薬だ。
「くー。しみる」
『おそろい!』
リーフェの声に、アイラが笑い出す。
「まあまあ、今日もみんな仲良しですね」
ふたりと一匹が重なり合うように引っ付いて笑い合っているのを、シンディが眺めながら、微笑んでいた。
* * *
オズボーン王国の一般的な子供は、三歳あるいは五歳から家庭教師による幼児教育が行われ、七歳からは学校へと通い、集団生活の中で学びだす。義務教育は十五歳までで、そこから三年間の高等教育と四年間の大学教育がある。
現在十歳のオリバーとアイラは、貴族の子供たちが多く通う、王立デルフィア初等学校に通っていた。
昼休み、オリバーとアイラは、男子生徒ふたりと女子生徒ふたりと一緒に中庭でうずくまっていた。
「マーゴット、見つかった?」
「ううん。ない。……どうしよう。このまま、お母様が治らなかったら」
「大丈夫よ。泣かないで。それに、四つ葉のクローバーなんてただのジンクスよ。見つからないから治らないなんてことはないわ」
アイラの励ましに、マーゴット・ブラウニング侯爵令嬢は、青い顔で頷いた。
先日、彼女の母親である侯爵夫人が、肺の病気で倒れた。
屋敷で療養しているそうだが、落ち着くまでは面会謝絶だと言われ、マーゴットは毎日不安でたまらないらしい。
そんな時、読んでいた本で、四つ葉のクローバーが幸運のお守りになると知った彼女は、それを見つけ、しおりに加工して母親に贈ろうと考えていた。
その話を聞いたアイラは、一緒に探そうと提案した。
学校の中庭にクローバーの群生地があるのは前から知っていたし、大人数で探せば、すぐに見つかるだろうと思ったのだ。