8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
 その時、作業をしていた男たちの声が響いてくる。

「また地震だ。なあ、これで本当にいいのか? もし作業中に大地震が起きたりしたら、俺たち、生き埋めになるんだぜ?」

 男の声に戸惑いが混じり始める。

「そうだよな。領主様、そのあたりのことはどう考えているのだろう」
「俺たちなんて捨て駒なんだろう。どうせ」

 三人は顔を見合わせ、考える。

「なあ、やっぱりやめよう。調査は正しく行われるべきだし、出なきゃ出ないで仕方ないんじゃないか?」
「まあ、鉱山で利益を得だしたのなんてここ半年の話だしな。以前と同じように農業で稼げばいいんじゃねぇか」
「でも、このまま俺たちが戻ったら、罰せられるんじゃないか?」

 男たちは顔を見合わせまた悩み始める。
 オリバーは割って入っていって、彼らの応援をしたくなった。が、姿を見られてもまずい。
 悩んでいると、やがてひとりの男が言い出した。

「今、国王様が来られているじゃないか。領主様にこんな指示をされたって言ってみたら、何とかしてくれないかな」
「馬鹿、俺たちがどうやって陛下に謁見するんだよ」
「オスニエル様は公明正大なお方だと聞く。直談判してみれば、案外聞いてくださるんじゃないか」
「そ、そうだよ!……もがっ」

 オリバーは思わず口走ってしまった。アイラが慌てて口を押さえ、黙って様子を見る。

「今何か聞こえたか?」
「ああ。なんか人の声のような」
「キャン」

 ドルフが子犬姿になり、その場から飛び出した。

「なんだ、犬かぁ」

 男たちはほっとしたように胸を撫でおろし、顔を見合わせて笑った。

「……なあ、やっぱ、やめようぜ。どうせ、掘り返したところを埋めたってすぐにばれるよ。調査に来るってことは専門家なんだろうし」
「うーん。そうだなぁ」
「このタイミングで地震が来たのも、なんかの思し召しのような気がするだろ」

 男たちは納得し合い、再び馬車へと乗り込んだ。
 馬のひづめの音が遠くなったあたりで、ようやくアイラがオリバーの口から手を放す。
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