8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
とはいえ、その後の仕事のあっせんまで王家主導でできるわけではない。人には人の役割がある。国王が末端にまでかかわっていては進むべき話が進まない。
「伯爵様。鉱山夫たちが、お話があると」
「またか? あいつらは解雇したはずだ。それに、今は陛下との話し合い中だ。追い返せ」
「それが、……オリバー王子が一緒におられるのです」
「は? オリバーが」
驚きで立ち上がったのは、オスニエルだ。
慌てて窓からのぞくと、オリバーがカイを連れてそこにいるではないか。
「オリバー?」
「父上。勝手をして申し訳ありません。ですが、どうしても伝えなければならないことがあるのです」
オリバーは二階の窓を見上げて、堂々と言った。
ベンソン伯爵は慌てて、オリバーを応接室へと招き入れた。
* * *
「まず、突然の訪問をお許しください。ベンソン伯爵」
オリバーがそう切り出し、ベンソン伯爵は手をこね回すようにして「いえいえ。そんな恐れ多い……」と恐縮している。
オスニエルは憮然とした表情でカイを睨んだ。
「オリバーはまだ十歳だ。公務にも関わらせていない。なぜ連れてきた、カイ」
「フィオナ様のご命令です。謝罪を含め、お手紙を預かっております。まずはご覧ください」
オスニエルはフィオナの手紙を読みながら、まだ不満そうにしている。
「信じていただけるかわかりませんが、僕は先日、聖獣の神託を受けたのです」
オリバーが神妙な表情で言う。
「は? 聖獣?」
戸惑うのはベンソン伯爵だ。オズボーン王国は武力で成長した国であり聖獣といった不可思議なものは信じていないのだ。
「オリバー様のお母上は、聖獣の加護を受けたブライト王国出身ですから」
さりげなくオリバーを擁護してくれるのは、オスニエルの後ろに控えるロジャーである。
「で、聖獣はお前に何と言ったのだ」
オリバーは、不機嫌そうなオスニエルを眺めながら、深呼吸をした。出過ぎた真似をしていることは承知で、オスニエルが、そのことで怒っているのも分かっている。
それでも、これはチャドから石を預かった自分がしなければいけないことなのだ。