8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
「伯爵、黙れ。俺の息子に暴言を吐く気か? ……聖獣自体はいる。妻のフィオナも不思議な力を使うのだ。俺が見ているのだから間違いはない」
「へ、陛下」
オスニエルは立ち上がり、オリバーに近づくと威圧的に見下ろした。
「ただ、国王として、今のお前の話をうのみにすることはできない。ほかの聖獣の話は信じられないな。ここを守護する聖獣がいたとして、お前にそれを頼む理由はなんだ。現時点で、聖獣がお前を選んだ証明するものは何もないのだろう?」
「この土地からもう鉄が出ないのは、ベンソン伯爵もうすうす感じておられるのではないですか? 聖獣は僕に言いました。過ちに気づかせるために、地震を起こし、地盤沈下を誘発したのだと。それでもやめないのならば、もっと大きな地震を起こすつもりだったそうです。ですが、彼らの会話を聞いて、やめたそうです」
「彼ら?」
オリバーが示したのは、三人の鉱山夫だ。
「伯爵は彼らに、鉄鉱石を埋め戻し、調査に備えるように言ったそうですね?」
「貴様ら……っ」
ベンソン伯爵が彼らを睨む。
「伯爵、黙れ」
それを睨んで抑えつけたのはオスニエルだ。
「でも彼らは、その命令に従うか迷っていたそうです。本当に地盤沈下がおこるなら、こんなことをしてはならない。犠牲になるのは、彼らのような末端の作業者だからです。彼らがやめる決断をしたことで、聖獣は考えを改めました。人間たちが自分たちで過ちを認めるのならば、この土地を人間に託す、と言ってくれたのです。僕がその伝言役に選ばれたのは、たまたま聖獣の声を聴くことができる人間だったからです。彼はこの石を、僕に託してくれました」
オリバーはオスニエルに白い石を差し出す。
「これは?」
「聖獣の力が込められた石です。彼が言うには、地面に関することであれば、たいていのことができると。……相当のエネルギーが詰まっているそうです」
「聖獣の力を込めた石……?」
オスニエルが意外そうに眼を見開く。
「嘘だろう? 聖獣は自分の意思を大切にする。加護は与えても、無条件で力を与えるようなことはしない」