8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3

 オスニエルのつぶやきに、オリバーは確かにそうだったと思い出す。
 フィオナはドルフに愛されていると思うが、フィオナがオリバーを夜の散歩に連れて行かないように言っても、オリバーが願えば連れて行ってくれる。リーフェも、自分が嫌な時はてこでも動かない。聖獣は己の意思でのみ力を発揮するのだ。

「力を込めた石をもらうなんて。オリバー、お前。……聖獣に信用されたのか」

 驚きのまま告げるオスニエルに、オリバーはチャドから受け取ったものの重さに気づいた。ただ力を与えられたのではない。これは信頼だ。大きすぎる力を、間違わずに使えると信じてくれたから、チャドはオリバーにこの石をくれたのだ。

 オリバーは顔を上げ、決然とする。

「はい。ですから、差し出がましい行為なのは承知で、自らここまで来ました。この石を託されたのは僕で、僕以外の人に渡すわけにはまいりません。この力の使い道に関しては、僕に責任があります」

 たかが十歳の子供と侮られようと、これだけは譲ってはならない。チャドの信頼を、裏切るわけにはいかないのだ。

「……なるほど。さすが王の子であり、聖獣に愛された子だ」

 オスニエルは納得し、ベンソン伯爵を振り返る。

「聞いただろう。これ以上採掘を続けることは、この土地にとって良くない。俺は、閉山を勧める。もちろん、これまでに渡した補助金については返還する必要はない。鉱山夫たちには、しばらくは閉山に伴う処理を頼めばいいだろう。それでも余る人員と技術者は王家で借り受けよう。オリバーが手にした石の力を利用する方法を考えなければならないからな」
「お、オスニエル様……」
「伯爵。国を治める者として、ひとつだけ言う。大事なものを間違えてはならない。避けられる事故ならば、避けられるよう全力を尽くさなければならないのだ。領民が一番大事だ。人がいなければ、国は国でいられない。これ以上、文句があるようなら改めて聞こう。……オリバー」
「はいっ」

 オリバーは背筋を伸ばしてオスニエルと向かい合う。

「よく話してくれた。聖獣がお前に託したのは正しかったのだと、この父が証明して見せる」
「……父上」
「お前を支えて行こう。一緒に、その力の使い道を考えるんだ」

 ようやく笑ってくれたオスニエルにほっとした瞬間、オリバーの目尻に涙が浮かんできた。

「あ、ありがとうございますっ」
「お前には勇気がある。俺は誇りに思うよ」
「……っ」

 欲しかった言葉を与えられ、オリバーはこらえきれず、父にしがみついた。カイとロジャーは顔を見合わせ、微笑ましく笑い合う。
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