8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
 
 半分寝かかっていたところで産声が聞こえて、みんなが我に返る。

「おぎゃああああ」
「……元気な声」

 最初に言葉を発したのがアイラだ。

「母上は、ご無事かな」

 のろのろとオリバーが立ち上がる。

 オスニエルは無言のまま部屋の扉を開けた。

「陛下! 元気な男の子です」

 乳母の手に抱かれた赤子は、大きな声で泣きながら、ぬくもりを求めて手を伸ばしていた。
 オスニエルはその子の手を軽く握った後、すぐにフィオナのもとに向かう。
 フィオナはすっかり疲労困憊といった様子で、意識も朦朧としていた。呼びかけに薄く目を開け、「オス……ニエル様?」と名を口ずさむ。

「よくやった。ご苦労だった」
「ふふ」

 彼女は柔らかくほほ笑んで、オスニエルへと手を伸ばす。

「そんなに泣きそうな顔、なさらないでくださいませ」
「早く元気になってくれ。このままでは執務に集中できない。……愛しているんだ、フィオナ」
「まあ。しっかりしてくださらないと、ドルフに蹴られますよ」

 クスクスと小さく笑ったものの、フィオナは疲れたようにその目を閉じた。

「フィオナ!」

 叫ぶオスニエルに、アイラが突進してくる。

「お父様、ひどいわ。私だってお母様とお話したかったのに、ひとりじめして!」
「アイラ。……母様は休めば起きるだろう」
「だったら、私に先に話させてくれてもよかったじゃない!」

 拗ねて叫び出すアイラを、オリバーは苦笑しながら見つめた。

「オリバー様、弟様ですよ」

 産婆が見せてくれた弟に手を伸ばせば、彼はオリバーの指を精いっぱいの力で握りしめてくる。

「ふふ。早く大きくなろうね。僕は君と遊ぶのが楽しみだよ」

 オリバーの声に、「あだぁ」と小さく赤子が泣いた。
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