8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
アイラの意気込みむなしく、予鈴が聞こえてくる。
「あ、予鈴だ! みんな、もう行こうぜ」
レナルドがそう言って立ち上がると、エヴァンも頷いてついていく。
「あ、待って、ふたりとも。アイラ様、マーゴット様、私たちも行きましょう。遅刻してしまうもの」
エミリアが時計を気にしながらそう言ったが、マーゴットはまだ諦めがたいのか、動かなかった。
「マーゴット、また後で探しに来ましょう?」
「アイラ様……」
「焦っても見つからないもの。放課後、また頑張りましょうよ」
「……ええ。ありがとう」
ようやく立ち上がったマーゴットの腕を引き、アイラは小走りになって教室棟の方へと向かった。
しかし、アイラもそうだが令嬢たちの足は遅い。着く頃には本鈴は鳴ってしまっており、待ち構えていた教師が、苦い顔でアイラたちを見下ろした。
「アイラ様、マーゴット様、エミリア様、予鈴が聞こえなかったのですか?」
「聞こえております。申し訳ありません。急いだのですが間に合わなくて……」
アイラが代表して謝っていると、少しだけ呼吸を荒げたオリバーが入ってくる。
「すみません。先生。遅れました」
「まあっ、オリバー様! あなたまでなんですか!」
先生の刺すような厳しい視線が、オリバーの方を向く。
「王太子たるあなたには、みんなの見本となってもらわねば困ります。大体……いえ、いいです。全員お座りなさい」
王太子という立場のオリバーに、それ以上強く出ることもできないのだろう。教師は怒りをぶつけることを諦めた。
マーゴットとエミリアは、目を見合わせながらほっと溜息をつき、先に戻っていたレナルドとエヴァンは、何をやっているんだという顔で、オリバーを見ている。
椅子に腰かけながら、アイラは思う。
(オリバーはクラスで一番足が速いのに。私たちを追い抜けないわけがないわ)
ふたりとも王の子とは言え、やはり王太子であるオリバーのほうが教師からすれば特別だ。オリバーが最後なら、教師は矛を収めるより方法がない。それがわかっていて、オリバーはわざと、最後に入ってきてくれたのだろう。
アイラはオリバーに目配せし、ありがとうの意を込めて手を振る。彼は、驚いたような、困ったような顔で笑うだけだ。
(ふふっ。相変わらず照れ屋さん!)
アイラはオリバーのさりげない優しさが大好きだ。ニマニマしてしまう顔を誰にも見られないよう、教科書を顔の前に広げた。
「あ、予鈴だ! みんな、もう行こうぜ」
レナルドがそう言って立ち上がると、エヴァンも頷いてついていく。
「あ、待って、ふたりとも。アイラ様、マーゴット様、私たちも行きましょう。遅刻してしまうもの」
エミリアが時計を気にしながらそう言ったが、マーゴットはまだ諦めがたいのか、動かなかった。
「マーゴット、また後で探しに来ましょう?」
「アイラ様……」
「焦っても見つからないもの。放課後、また頑張りましょうよ」
「……ええ。ありがとう」
ようやく立ち上がったマーゴットの腕を引き、アイラは小走りになって教室棟の方へと向かった。
しかし、アイラもそうだが令嬢たちの足は遅い。着く頃には本鈴は鳴ってしまっており、待ち構えていた教師が、苦い顔でアイラたちを見下ろした。
「アイラ様、マーゴット様、エミリア様、予鈴が聞こえなかったのですか?」
「聞こえております。申し訳ありません。急いだのですが間に合わなくて……」
アイラが代表して謝っていると、少しだけ呼吸を荒げたオリバーが入ってくる。
「すみません。先生。遅れました」
「まあっ、オリバー様! あなたまでなんですか!」
先生の刺すような厳しい視線が、オリバーの方を向く。
「王太子たるあなたには、みんなの見本となってもらわねば困ります。大体……いえ、いいです。全員お座りなさい」
王太子という立場のオリバーに、それ以上強く出ることもできないのだろう。教師は怒りをぶつけることを諦めた。
マーゴットとエミリアは、目を見合わせながらほっと溜息をつき、先に戻っていたレナルドとエヴァンは、何をやっているんだという顔で、オリバーを見ている。
椅子に腰かけながら、アイラは思う。
(オリバーはクラスで一番足が速いのに。私たちを追い抜けないわけがないわ)
ふたりとも王の子とは言え、やはり王太子であるオリバーのほうが教師からすれば特別だ。オリバーが最後なら、教師は矛を収めるより方法がない。それがわかっていて、オリバーはわざと、最後に入ってきてくれたのだろう。
アイラはオリバーに目配せし、ありがとうの意を込めて手を振る。彼は、驚いたような、困ったような顔で笑うだけだ。
(ふふっ。相変わらず照れ屋さん!)
アイラはオリバーのさりげない優しさが大好きだ。ニマニマしてしまう顔を誰にも見られないよう、教科書を顔の前に広げた。