8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
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授業がすべて終わると、アイラたちは三人そろって再び中庭へと向かった。
「今度こそ見つけましょうね!」
アイラが、マーゴットの背中を支えるように手を添えて、励ましている。
遠巻きに眺めていたオリバーは、いつもにこやかな笑顔でみんなを気づかえるアイラを、純粋にすごいと思っていた。
アイラはいつも友人に囲まれている。もともと社交的な気質なのだ。
それに対し、オリバーは話すことが苦手だ。会話は途切れがちだし、沈黙が続くと、悪いことをしたような気持ちになって落ち着かない。
幼少期から、常におしゃべりしているアイラと共にいたせいか、自分が話さなくとも、なんとなく物事は進んでいった。アイラが会話をつないでいてくれるからと楽をしてきたツケが、今になって回ってきているのだ。
学校に入学し、互い以外に友人ができるようになると、学校では別行動することが多くなった。なんとなくだが、男子は男子、女子は女子でいることも多いし、男女別の授業もある。
そんなときに思い知るのが、自分の口下手さだ。王太子であるオリバーは代表を任されることも多いのだが、必要事項だけを伝えて終わってしまうことがほとんどだ。
もっとみんなに話を振って、意見を聞くようにしなければとは思っているのだが、それが思うようにできない。
「……あ、そうだ」
オリバーは時計を確認する。
貴族子女が多く通うこの学校には、帰宅時間には迎えの馬車が大勢やってくる。学園内に馬車の待機場所があり、早く着いた馬車はその場で待っているのだ。
時間になれば、大体は家の序列の順に並ぶことが多く、オリバーやアイラの迎えは一番に門の前にくる。
(先に伝えておかないと)
オリバーは、学園内にある馬車の待機場所に行く。案の定、王家の馬車はもう来て待っていた。
「オリバー様、もうお帰りで?」
「ううん。逆。ちょっと用事が合って遅くなるから、僕たちが来るまで、ここで待っていて」
「かしこまりました!」
御者に事付けをした後は、そのまま門の方へと向かう。