8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
 戻りがてら、オリバーはポケットに忍ばせた石をぎゅっと握る。
 石拾いは、オリバーの数少ない趣味のひとつだ。今よりもっと子供のころから、ドルフの背に乗って国のいたるところに連れて行ってもらった。行った先で、妙に気持ちを引き付けられる石を見つけては持って帰ってくる。
 今みたいに、誰が悪いわけでもないのに少しもやもやするような気分の時は、石を握っていると、気持ちが落ち着いてくるのだ。

(さて、三人はクローバー、見つけられたかな)

 中庭に向かおうと足を向けた途中で、ふと、引っ張られたような感覚がした。オリバーは、その感覚に逆らわず、校舎の裏側へと向かった。中庭にも点在しているように、そこにもクローバーの群生地がある。

(呼ばれた感じがしたってことは……)

 膝をついて目を凝らし、クローバーの葉の数を確認していく。五分ほどして、ようやく四つ葉を見つけ出した。
 オリバーは生まれつき勘の鋭いところがあり、探し物を見つけるのは得意だ。

「よかった。これで、マーゴットも落ち着くかな」

 オリバーは、中庭でまだ必死に探している彼女たちに、そっと近づく。

「あ、オリバー」

 アイラが最初に気づき、手を振ってきた。オリバーは手の中に四つ葉を隠したまま近づき、一緒に探すふりをし始める。

「ね、これじゃない?」

 こっそりとその四つ葉を群生している三つ葉に混ぜ、彼女たちがのぞき込んできた瞬間に、引き抜いた風を装って手に取る。

「わあ、本当だ」

 マーゴットの顔が、ぱっと晴れ渡った。先日からずっと暗い顔をしていたからか、彼女のほころんだ口もとを見るだけで、オリバーも少し気分が明るくなる。

「はい」
「……ありがとう! オリバー様」

 マーゴットは手のひらに乗せられた四つ葉のクローバーを涙目になって見つめていた。
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