8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
国を支えるということ
 オスニエルの治世になり幹線道路が国の東西を縦断するようになると、王都は流行の中心地となり、様々な物品が行きかうようになった。
 それは国内だけにとどまらず、近隣諸国をも巻き込み、オズボーン王国は、経済的に大きな飛躍を遂げたのだ。

 道が整えば、次に求められるのは輸送の速さだ。

 オスニエルはここ五年の間、より早い輸送方法を編み出すために、研究施設への投資を行っていた。馬車よりも大量に速く物を輸送するためのアイデア、新しい動力の開発。有識者や若者、多くを巻き込んで議論させた結果、石炭を用い、莫大な熱エネルギーを発生させて動力とする蒸気機関が考案された。

 やがて、もともと鉱山などで使われていた、手漕ぎトロッコを組み合わせ、石炭を燃焼させて走る鉄道が開発されたのだ。

 それを受け、オズボーン王国では、現在線路の敷設工事が行われている。
 今は石炭と鉄はいくらあってもいい。炭鉱や鉄鉱石の採掘場が次々と開かれ、国は積極的に補助金を出していった。


 オスニエルは、国内随一と言われる規模の製鉄所を視察していた。
 国内各地で採られた鉄鉱石が、この製鉄所に持ち込まれ、精錬されて、鉄になるのだ。

「どうだ。調子は」
「いいですよ。それにしても、ベンソン伯爵の土地からとれた鉄鉱石は、ずいぶん純度が高いですね」
「そうなのか。半年前に補助金で開いたばかりの鉱山だが、期待できそうだな」

 オスニエルは口元を緩める。

「鉄道もそうだが、この広大な土地に線路を敷くだけでも大事業だ。鉄はいくらっても足りない」
「そうですね」

 ロジャーが相槌を打ちながら、メモを取っている。
 今、線路が敷かれているのは、昔からある北方地区の鉱山とこの製鉄所の区間、そして製鉄所から王都までの区間だ。

 前者は、鉄鉱石を一度に大量に運び、必要な鉄を速やかに取り出すため。後者は、製鉄所で働く人員を確保し、精錬された鉄を加工業者のもとへ輸送するためだ。
 今はこれだけだが、いずれは主要な町同士をつないでいきたいとオスニエルは考えている。

「鉄道事業がうまくいけば、この国はもっと栄えることができる」

 力強く語るオスニエルを、ロジャーは頼もしく見つめていた。

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