8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
「しかし、本当に速いな、鉄道は」
オスニエルは本日の視察のため、朝から職人に交じって鉄道に乗った。そして、その仕事ぶりを確認したり、今後の計画などを話し合ったりして一日を過ごし、仕事終わりの職人たちに合わせて、王都に戻ってきたのだ。
馬で一日かかった距離が、鉄道ならば一時間程度。これまでなら三日かかった視察もわずか一日だ。鉄道が日常的に使えるようになれば、どれほどの経済効果があるだろう。
オスニエルが王城に戻った時には日が落ちていた。撤収モードに入っている騎士団を横目で眺めながら廊下を歩いていると、正面から、騎士団長がオスニエルを見つけて駆け寄ってくる。
「オスニエル様、ちょっとよろしいでしょうか」
「いいぞ。なんだ?」
「オリバー様のことで」
騎士団長の気まずそうな声に、オスニエルはしばし考え、騎士団長に執務室へ来るように言った。
「私は、今日の視察結果をまとめてまいります」
ロジャーが気を使って別室に移ったため、執務室にはオスニエルと騎士団長のふたりきりとなる。
「オリバーがどうかしたか? けいこ中問題でもあったか?」
騎士団長には、オリバーの剣術のけいこを頼んでいる。
男子生徒は学校で剣技を習うが、オリバーは幼少期から運動神経が良く、学校の授業では物足りないのではないかと感じたからだ。
学校から帰って一時間程度ではあるが、騎士団長から直接指導を受けられるというのは、彼にとっても気の引き締まることのようで、訓練には積極的だったはずだ。
「オリバー様は、さすがオスニエル様のお子。反射神経もよく、体力も申し分ありません。何よりも、その動きの速さは、私でも置いていかれることがあります」
「おべんちゃらはいい。何か気になることがあるから言いに来たのだろう?」
オスニエルにはっきり言われ、騎士団長は苦笑する。