8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
「そうですね。……気が優しすぎることが気になります」
「……どういう意味だ?」
「とどめを刺さないのですよ。相手が倒れ込んだところで、剣を止めてしまうのです。使っているのは訓練用のなまくらの剣です。鎧の上からであれば怪我をさせることはないと伝えてもありますが、それでも躊躇なさるようです。……もちろん、練習ですから、本当に打ち込まなくても構いません。ですが、ここがもし戦場だったらと思えば、気にはなります。いざという時に、オリバー様はとどめを刺せないのではないかと」
「危ないな」
オスニエルは、戦場で生きるか死ぬかという状況を何度も潜り抜けてきた。一瞬の判断の迷いが、命取りになることは肌でわかっている。
「冷徹になれ、とも言いづらいが、自分のことは大事にしてもらわねば困る。オリバーの代わりはいないのだから」
オスニエルの断言に、騎士団長は少しだけ緊張したように告げる。
「フィオナ様のお腹のお子は……」
男であればスペアになるといいたいのだろうか。オスニエルがぎろりと睨むと、騎士団長は失言を悟って背筋を伸ばした。
「男でも女でも、第三子には第三子の役割がある。オリバーの代わりにはならない」
「はっ、失言でした!」
「まあ、オリバーには俺から話してみる」
「よろしくお願いいたします」
騎士団長に下がるように言い、オスニエルは口もとを押さえてため息をついた。
(優しさが仇になる……こともあるからな……)
親になると、いろいろなことが心配になるものだ。オスニエルはなんとなく重く感じる肩を、回してほぐした。