8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
 最近のオスニエルは、鉄道周りの執務で忙しい。
 夕食は王城で側近たちと軽く済ませることが多く、後宮に戻るのは子供たちが眠りについてからだ。

 それでも、昨日よりは早く執務室を出て、後宮へと戻ると、今日はフィオナが迎えに出てきた。

「お帰りなさい。オスニエル様」

 大きくなったお腹を両手で支えながら、うれしそうにほほ笑んでいる。

「今日はお医者様に見ていただいたのですよ。順調だそうです」
「そうか。それはよかった。ここは寒い、部屋に戻ろう」

 オスニエルはフィオナの肩を抱き、そろって寝室へと向かう。
 中に入ると、いつもフィオナのそばに引っ付いているはずの銀色の聖獣の姿がなかった。

「……ドルフは?」
「今日はオリバーと寝るそうですよ」

 フィオナはあっけらかんと答えた。

「たまにそういう日があるな」
「あの子は昔からドルフに懐いていますからね」

 フィオナにしても、少しずつ親の手を離れていく子供たちに、信頼のおける存在がいることは安心材料のひとつだ。

「まあたまにはこういう日もいい」

 オスニエルはフィオナに顔を近づけ、キスをする。
 お腹がつかえて、強く抱きしめることができないのがもどかしい。長年夫婦でいれば、キスの感覚で彼女にその気があるかもわかるものだが、妊娠後期に入ってからは気持ちがあってもお預け状態だ。

 平たく言うと、オスニエルもたまっている状態なのだ。

「ん……」

 フィオナから甘い声が漏れたと同時に、彼女は体をビクリと震わせる。

「どうした?」
「お腹、蹴られました」

 フィオナが苦笑する。腹の子からの警告だろうかと、オスニエルも若干バツが悪くなる。

「そろそろやめよう。俺が止められなくなる」
「……そ、そうですね。あ、お茶を入れてきます」

 フィオナは恥ずかしそうにしながら、ゆっくりと立ち上がった。
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