8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
 フィオナの入れてくれたお茶を飲みながら、オスニエルは一息つく。

「なあ、オリバーのことで少し気になることがあるんだが」
「どうしたのですか?」

 フィオナを隣に座らせ、腰を引き寄せながら、オスニエルは騎士団長から告げられた内容を簡単にまとめてフィオナにも伝えた。

「優しすぎる……と?」
「ああ。戦場では一瞬の躊躇が命取りになる。俺もそういう意味では心配だ」

 フィオナはしばらく黙り込んで考える。お腹をさすりながら、「でも……」と続けた。

「その優しさこそがあの子の強みじゃないでしょうか」
「なに?」

 オスニエルは意外に思って聞き返す。てっきり、フィオナも自分と同じ意見だろうと思っていたのだ。

「あの子はあなたのように、強い意志で民を牽引するような、強い王にはなれないでしょう。でも、誰よりも周りに気を配り、陰ながら人を守ろうとする優しい子です。その気質は、王に向かないものではないと、私は思っています」
「それは……そうだが。だが王には強さが……」

 オスニエルの言葉を、フィオナの指が止める。唇に人差し指を押し当てられて、オスニエルはドキリとして黙った。

「それはあなたが戦争時代の王太子であったからそう思うのです。オリバーは、エリオットに似ていると思いませんか? 子供の頃のエリオットはオリバーよりずっと弱く見えました。優しい子でしたけれど、泣き虫で、将来を心配したものです。でも今は、立派に王太子としての役目を果たしているでしょう」

 フィオナの弟のエリオットは、現在二十七歳だ。六年前に国内の有力貴族の娘と結婚し、今や二児の父である。まだ、父が現役で、彼は王太子という立場だが、多国間との貿易交渉などには積極的に顔を出している。柔らかな物腰で相手を煙に巻きながら、うまく自分たちの利益は確保しているなど、侮れないところもある。
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