8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
「エリオットが今後王位を継承することに、不安は感じられません」
「まあな。エリオット殿は聖獣の加護もあるしな」
「あの子もあるじゃありませんか」
「リーフェだぞ……?」
オスニエルが不安そうにつぶやく。リーフェが聞いたらぷんぷん怒り出すだろう。
「あの子に、国民を愛する心があれば、きっと大丈夫です。優しい王が賢王と言われる時代もあるでしょう? そうあれるように、私たちが土台を整えてあげればいいのですよ」
目からうろこが落ちたような衝撃を、オスニエルは受けた。
フィオナはいつもそうだ。さらりと、オスニエルの考えを覆すようなことを言う。
「なるほど。そういう時代を、俺が作ればいいのか」
「他国と渡り合っていくのに、今必要なのは、武力よりは平和な世界を維持する交渉力や経済力です。あなたはそのために、毎日遅くまで頑張っていらっしゃるのでしょう?」
「そうだな」
オスニエルはフィオナの隣に座り、頭頂にキスをする。
「駄目ですよ」
「わかっている。キスだけだ」
目元に、ほほに、唇に。胸に湧き上がるいとおしさの分だけと思うと、キスをやめるタイミングが無くなる。
「ん、んー!」
ついに呼吸が苦しくなったフィオナが、腕の中で暴れる。
「もうっ。あんまりされると甘えたくなってしまうのでやめてください」
「はは」
オスニエルは笑うと、彼女の膨らんだお腹を、優しくなでる。
「早く元気に生まれてこい。父様は母様不足に耐えられなくなってきた」
「まだ二ヵ月は先ですよ」
フィオナに怒られながらも、オスニエルは、先ほどまであった不安な気持ちが、消えているのが分かった。
自分の妻は、誰よりも強いのだと、こんな時に実感するのだ。