8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
オリバーは、記憶をたどる。城には多くの貴族の出入りがあるし、オリバーは執務に参加しているわけではないので、誰がどの仕事を担当しているかなどはわからない。
それでも、オリバーなりに貴族名鑑に目を通して、出入りのある貴族の顔と名前くらいは覚えようとしていた。
が、ベンソン伯爵の姿が思い出せない。
「思い出せないな。あまり父上とは仲が良くない方かな」
『そうかもな。俺も姿はよく知らん。さ、拾えたのならそろそろ帰るぞ』
「うん」
オリバーはドルフにしがみつき、飛び上がった際に再び地上を眺める。
民家のあるあたりが、ほのかに光っている。
オリバーはこの夜の景色が好きだ。今もこの闇の中、誰かがその明かりを守るために一生懸命生きている。
そういうことを想像すると、とてもあたたかな気持ちになる。自分は王太子で、そんな明かりを守れるようにならなくてはいけないのだと、自信を無くしがちなオリバーは励まされたような気持になるのだ。