8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
『みんな、うるさいよぉ』

 そこにやって来たのは子犬姿のリーフェだ。
 文句を言っているのだが、フィオナと双子以外には「キャン」としか聞こえないため、デイジーは喜んで近づいていった。

「ワンちゃん!」
『うわあ、小さい子だ』

 リーフェは一瞬たじろいだものの、デイジーの触り方が優しいからか、動かずにじっとしていた。目を細めているところを見れば、気持ちがいいのだろう。

(リーフェ、うれしそうだな)

 白いしっぽがブンブン揺れている。
 オリバーが思うに、リーフェは基本的に女の子が好きなのだ。オリバーよりもアイラと共にいたがるのは、そういう理由もあるのだと思う。

(僕、ここにいていいのかな)

 赤子以外は女性ばかりという環境に、オリバーはだんだん、居心地が悪くなってきた。

「オリバー?」
「僕、剣術のけいこがあるから、行くね」
「オリバー? まだ早いんじゃ……」

 フィオナの声を背中に聞きながら、オリバーは、そそくさとその場を抜け出した。



 後宮にある食堂で、フィオナと双子はともに夕食をとっていた。六人程度の食事が乗るといっぱいになってしまうテーブルに、短辺にフィオナ、長辺にオリバーとアイラが並ぶ形で座っている。

「でね? 合唱祭で、私、ソロパートを歌えることになったの!」
「まあ。すごいじゃないの、アイラ」
「視察、お父様来てくれるよねぇ」
「そうね。私も聞きに行きたいけれど、ひと月後は臨月だもの。さすがに無理かしら」
「練習するときに、お腹の赤ちゃんにもその時にいーっぱい聞かせてあげる!」
< 33 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop