8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
フィオナが微笑み、メイドたちも微笑ましそうにアイラを眺める。
音楽に関しては、オリバーの出る幕はない。ただ黙って聞いていると、フィオナはオリバーに話を振って来た。
「オリバーは、今日学校でおもしろいことはあった?」
「……そうですね。今日はいつも通り……うーん。変わりないです」
「そう……」
なんとなく尻切れトンボとなり、会話が宙に浮く。
(ああ、失敗した)
沈黙を作ってしまったことが申し訳なく、オリバーは自分のふがいなさが悲しくなる。
「そうそう、ポリーに聞いたのだけれど……」
フィオナは話の主導権を取り戻し、再び話し始めた。
「入るぞ」
そこへ突然、オスニエルがバタバタと入って来た。
「お父様!」
「まあ、オスニエル様。慌ててどうなさったんです?」
呼びかけるのさえ一歩遅れてしまい、オリバーは父に声をかけるタイミングを見失う。
「急で済まないが、明日からしばらく留守にすることになった」
焦った様子のオスニエルに、アイラもオリバーも顔を見合わせる。普段、余裕の表情の父親ばかり見ているせいか、彼が動揺していると一気に不安になってくる。
「ベンソン伯爵領で、地震が起きたらしい。地盤沈下で一部建物が傾いているそうだ。今詳細を調べさせているが、一度現地を視察してくる」
「そうなのですね。準備するものは?」
「ロジャーに任せているから大丈夫だろう。俺にも食事をもらえるか? 軽く取ってから、もう一度執務室に戻る」
侍女たちが食事を運んできて、久しぶりに家族全員そろっての食事をした。
しかし、話題はオスニエルの視察先のことばかりで、アイラは合唱祭のことを言えなかったし、オリバーも余計な口は挟めなかった。
「地震なんて……大丈夫かしら」
フィオナの顔が陰ると、オスニエルは安心させるように笑った。
「大丈夫だ。その後も地震は続いているそうだが、そこまで激しい揺れではないそうだ」
アイラとオリバーは、地面が揺れるという感覚がいまいちわからない。王都ではめったに地震が起こらないのだ。
「地震ってどんな感じ?」
アイラが尋ねると、オスニエルは少し考えてから答えた。