8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3

 フィオナが微笑み、メイドたちも微笑ましそうにアイラを眺める。
 音楽に関しては、オリバーの出る幕はない。ただ黙って聞いていると、フィオナはオリバーに話を振って来た。

「オリバーは、今日学校でおもしろいことはあった?」
「……そうですね。今日はいつも通り……うーん。変わりないです」
「そう……」

 なんとなく尻切れトンボとなり、会話が宙に浮く。

(ああ、失敗した)

 沈黙を作ってしまったことが申し訳なく、オリバーは自分のふがいなさが悲しくなる。

「そうそう、ポリーに聞いたのだけれど……」

 フィオナは話の主導権を取り戻し、再び話し始めた。

「入るぞ」

 そこへ突然、オスニエルがバタバタと入って来た。

「お父様!」
「まあ、オスニエル様。慌ててどうなさったんです?」

 呼びかけるのさえ一歩遅れてしまい、オリバーは父に声をかけるタイミングを見失う。

「急で済まないが、明日からしばらく留守にすることになった」

 焦った様子のオスニエルに、アイラもオリバーも顔を見合わせる。普段、余裕の表情の父親ばかり見ているせいか、彼が動揺していると一気に不安になってくる。

「ベンソン伯爵領で、地震が起きたらしい。地盤沈下で一部建物が傾いているそうだ。今詳細を調べさせているが、一度現地を視察してくる」
「そうなのですね。準備するものは?」
「ロジャーに任せているから大丈夫だろう。俺にも食事をもらえるか? 軽く取ってから、もう一度執務室に戻る」

 侍女たちが食事を運んできて、久しぶりに家族全員そろっての食事をした。
 しかし、話題はオスニエルの視察先のことばかりで、アイラは合唱祭のことを言えなかったし、オリバーも余計な口は挟めなかった。

「地震なんて……大丈夫かしら」

 フィオナの顔が陰ると、オスニエルは安心させるように笑った。

「大丈夫だ。その後も地震は続いているそうだが、そこまで激しい揺れではないそうだ」

 アイラとオリバーは、地面が揺れるという感覚がいまいちわからない。王都ではめったに地震が起こらないのだ。

「地震ってどんな感じ?」

 アイラが尋ねると、オスニエルは少し考えてから答えた。
< 34 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop