8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
「俺も二度三度しか経験がないが、横に揺れることが多いようだな。地面が揺れるって感覚は独特で、ちょっと説明はしづらいな。まあでも、長い時間ではない。じっとして落下物にさえ気を付けていれば、それほど危険ではないだろう。さて、では俺は一度戻る」
あわただしく食事を終えオスニエルが立ち上がる。フィオナも見送るために一緒に部屋を出て行った。
残されたアイラとオリバーは、顔を見合わせた。
「……お父様、大変そうね。合唱祭までに落ち着くかなぁ」
「アイラ、父上が見に来るの、楽しみにしていたもんね」
「うん。……せっかくお父様に見てもらえるって思ったのになぁ」
にわかにアイラの元気がなくなる。普段元気なアイラにこんな顔をされると、オリバーも不安になってしまう。なにか言って慰めなきゃと思うけれど、うまい言葉も思いつかず、口下手な自分が情けなくなる。
オリバーはアイラの手をぎゅっと握った。
「大丈夫だよ、アイラ。父上だもん。まだひと月もあるし、そのころには落ち着いているって」
「……そうよね。お父様なら、ちょちょいのちょいで片付けちゃうわよね」
それでも、アイラはなんとなく落ち着かないようだ。
風呂上がりに、ソファで丸くなっているリーフェのもとへ行き、抱き上げた。
「リーフェ、一緒に寝ようよ」
『いいよー』
アイラはリーフェを抱っこしたまま、シンディに連れられて寝室へと向かった。
残されたオリバーは、「僕も寝るね」と侍女に言って部屋へと戻る。
ベッドに転がり、天井を見上げながらため息をつく。
(アイラ、最後元気が無くなっちゃったな)
彼女が元気いっぱいでも取り残された気分になるくせに、元気が無くなればそれはそれで心配になるのだから困ったものだ。
(地震なんて……大丈夫なのかな。もし父上が怪我でもしたら)
妊娠中の母親の心情を慮ると、気分が落ち着かない。
(もし何かあっても、母上は身動きが取れないだろうし。僕は長男なんだから、みんなを守らなきゃ……)
ゴロゴロと寝返りを打ちながらそんなことを考えていると、ドルフがひょっこりとやってくる。