8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3

「ね、リーフェのママってもういないの?」
『うん。でもママは私のこと守ってくれているから』

 リーフェのしっぽがフルフルと揺れる。アイラはきょとんとリーフェを見つめていた。

「どうしてそんなに信じられるの」
『どうして信じられないの? ママでしょ? オリバーだってアイラの弟だよ? アイラのこと好きに決まっているじゃん』
「なんでそんなに自信もてるのぉ」

 納得いかないのか、アイラは再び泣き出した。しかしやがておとなしくなり、鼻をすすりながら、顔を上げる。

「……喧嘩したこと、お母様に話してくる」

 アイラは涙をぬぐいながら、リーフェの背中をよしよしと撫でた。

「さっき、叩いてごめんね」
『いいよー』

 リーフェはくすくす笑いながら、尻尾でアイラの背中を押してあげた。

* * *

 フィオナはドルフと寝室にいた。

「オスニエル様、大丈夫かしらね」
『地盤沈下に関しては、そこまで大きな被害じゃなかった。一部の建物は陥没していたがな』
「どうして知っているの? 見に行ったの?」
『……まあ、そんなところだ』

 歯切れの悪い返事に、フィオナは眉を寄せる。どうもここのところ、子供たちといいドルフといい秘密が多い

「……みんな自分の世界を持ち始めるのね」
『なんだ、やきもちか』
「ううん。それが自然なはずなのだけど、少し寂しいわね。アイラの気持ちもわかるわ」

 フィオナはベッドにごろんと横になる。お腹が重く、あおむけでいるとすぐに苦しくなってしまうので、横向きでだ。

『オリバーは、少し危険かもしれないぞ』
「どういうこと?」
『自信がないといえばいいのかな。人のことばかりで、自分を守ることをあまり考えていない』
「それは困るわ。オリバーに何かあったら、正気でなんて居られないわ。それに、私だけじゃない、この国にとっても大事になる」
『まあ、俺がついていてやるから、そこまで心配はしなくてもいいが』
「お母様―」

 ペタペタと廊下を歩く音がしたかと思うと、アイラが涙目でやってくる。

「まあ、アイラ、どうしたの」
「お話きいて。私、オリバーと喧嘩しちゃった」

 フィオナはアイラを中に招き入れ、彼女の手を握りながら、話を聞いた。
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