8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
「オリバーは、不安なのね……」
「どうしてあんなこと言うのかな。オリバーはすごいってみんな思っているのに、オリバーだけが信じてくれない」
「何かきっかけが必要なのかもしれないわね。自分のことが信じられるようになるだけの何かが……」
フィオナも昔は、自分に自信がなかった。王族ならば誰でも得られるはずの聖獣の加護をもらえなかったのだ。王族としても価値のない人間だと思っていた。
(自信が持てるようになったのはいつからだったかしら。ドルフが加護をくれて、ポリーの好意を素直に信じられるようになって。……孤児院の子供たちが笑顔を見せてくれて……)
フィオナは出会った人々の顔を思い出す。笑顔を向けられるたびに、前を向くことが怖くなくなっていった。
孤児院をよくするためにオスニエルに食って掛かることもいとわないほど。
「……アイラ」
「なあに、お母様」
「アイラは、オリバーのこと好き?」
「あたり前! そりゃ、なんでわかってくれないのって思うとイライラするけど、嫌いになんてなるわけない」
「だったら、そのままでいいわ。アイラがオリバーを信じてあげていれば、いつかオリバーも自分を信じられるようになる」
力のこもったフィオナの眼差しに、アイラは涙目のママきょとんと見つめる。
「ほんと?」
「自分を信じてくれる人がいるって、何よりもすごいことなのよ」
母の言葉に、アイラは少し迷いも見せつつ頷いた。
ドルフは、微笑んだまま親子の会話を眺めていた。
* * *
陽も暮れようという頃、オリバーは城と後宮の間の中庭で、剣をふるっていた。
アイラの傷ついた顔が頭から離れない。つらくて苦しい。何もかも上手にできない自分が、心底嫌でたまらない。
「はあ、はあ、……僕は……」
(誰の役にも立たないなら、消えてしまいたい。それでも、自分の立場を思えば、誰にも弱音なんて吐けない)
自分に対する怒りや情けなさを一瞬でも忘れたくて剣を取ったはずだった。けれど、少しも頭からアイラの泣き顔が消えてくれない。