8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
 
「オリバー様はそのままでいいんじゃないですか? その年齢で、これだけの剣技ができれば十分ですし、なにより俺は、話しやすくて好きなんですよ。オリバー様が」
「そう?」
「ほら、不敬とか言わないじゃないですか。オスニエル様にこの調子で話しかけると、視線だけで殺されそうになります」
「なにそれ。あはは」
「本当ですよ。殺気が怖いのなんのって」

 カイは、オリバーから剣を受け取ると、「今日はもう終わりにしましょう」とほほ笑んだ。

 特に何が解決したというわけではなかったが、カイと話したことで気がまぎれた気がする。

「ありがとう、カイ」
「どういたしまして。迷っているときは、やみくもに鍛錬するのはよくないですよ。怪我をしてしまいます。そんなときはどうぞ、俺をお呼びください」
「うん」

 カイと別れ、オリバーは後宮へと戻る。
 けれど、オリバーの足取りはだんだん重くなってきた。戻ればアイラと顔を合わせる。
 あんなことを言ってしまって、アイラにどんな顔をすればいいのかわからない。

「キャン」

 犬の鳴き声がして、立ち止まる。薄暗くて色の判別ができない。ドルフかリーチェか、と思いながら見ていると、すぐ近くまで来て白い毛の子犬だということが分かった。

「リーチェ」
『オリバー、遅い』

リーチェはオリバーの足元に来て見上げた。

「どうしたの?」
『アイラがうるさい。早く来て』
「アイラが? でも……」

 まだ躊躇しているオリバーを、リーチェは服にかみついて引っ張った。

『いいから、早く』
「でも、僕が顔を見せたって……」
『違うよ。オリバーがこなきゃ駄目なの』
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