8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
服が破れそうな勢いで引っ張るリーフェに、オリバーは躊躇しつつ足を踏み出した。
「ただいま」
「どこ行っていたの、オリバー。遅いから心配したわ」
迎えてくれるのはフィオナだ。
「うん。ごめんなさい」
フィオナの後ろから、アイラがひょこりと顔を出す。目の周りが少し腫れていて、泣いたのであろうことがわかる。きっと、フィオナもふたりが口論したことはわかっているのだろう。
「……あの」
まだ言葉を見つけられないオリバーを制するように、アイラが一歩前に出た。
「お帰り、オリバー」
戸惑うオリバーの腕をつかみ、「早く、ごはん」とぐいぐい引っ張る。
「う、うん」
「私、オリバーと一緒がいい」
泣かせたのはオリバーの方なのに、アイラはまだそう言ってくれるのか。
アイラが、自分の言葉をどんな風に受け止め、どんな風に傷ついたのか。考えると胸が痛くて、気持ちがぐちゃぐちゃになってしまう。しかも、謝れるほど気持ちの整理もついていない。それでも、一言だけ返せるとするならば。
「うん。僕もアイラと一緒がいいよ」
離れたいと、思ったことはない。それは本当で、そこだけならば断言できる。
「……ならいいの」
アイラはぱっと顔を上げ、笑った。
アンナにひどい言葉を浴びせたのに、許してくれるアイラはすごいと思う。
うれしい反面、格の違いを見せられたような気もして、オリバーは内心で落ち込んだ。