8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3

 * * *

 アイラは最近、歌の練習で帰りが遅い。先に帰っていてもらってもいいのだが、オリバーは剣術の練習をしながら待っていてくれる。
 それはうれしいのだが、帰りの馬車で話しかけてもどこか上の空のままで、アイラはなんだか寂しくなる。

「オリバーが変。元気がないの。原因がなんなのか、ドルフとリーフェは知らない?」

 ドルフとリーフェを部屋に連れ込んで、内緒の会議だ。アイラは議長よろしく胸を張ると、二体の聖獣に問いかけた。

『アイラと喧嘩したからじゃないの?』

 リーフェがあっさりと思い出したくないことを言うので、アイラはますます不機嫌になる。

「それは仲直りしたもん。私のことじゃないよ。きっと。もっと何か別なことで悩んでいるはず!」
『そんなこと言われてもなぁ』
『呼び出しておいてそんな話か、アイラ』

 ドルフにあきれたように見つめられても、アイラはめげない。
 オリバーの様子は明らかにおかしい。大事な弟が困っているのだ。助けるのは姉の務めである。

「……助けてあげたいんだけど、私がなんか言うと、オリバー、嫌かなって思って」

 先日の喧嘩の尾が引いていて、アイラはオリバーに関して手を出すことをためらっていた。そもそも、アイラに内緒にするということは、かかわってほしくないということだ。なのに無理やり聞き出しては、きっと嫌だろう。
 わかっているけれど、アイラはアイラで気になるから落ち着かない。

『少し放っておけばいいだろう』
「でも、間違いなく、悩んでいるんだよ!それはわかるの」
『じゃあ、アイラが聞いてみればいいじゃん』
「それができないから困ってるんでしょう! ……ううう。お願い。ドルフ、リーフェ」

 アイラに泣きつかれ、ドルフとリーフェは顔を見合わせ、渋々頷いた。


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