8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
* * *

 チャドの申し出に答えるべきか否かを、オリバーはまだ迷っていた。

 〝自分だけの聖獣が欲しい〟

 それは、オリバーがひそかに、だがずっと願っていたことだ。
 もちろん、そう願うことに罪悪感もある。せっかく加護を与えてくれたリーフェに対して、あまりに失礼な願いだから。
 オリバーは決してリーフェが嫌なわけじゃない。アイラと分け合うことが嫌なわけでもない。ただ今は、自分だけの何かが欲しくてたまらないのだ。

(僕の増幅能力って、どのくらい効果があるんだろう)

 国の発展のために、鉄が必要だとオスニエルは言っていた。だから、鉱山を持つ領土に支援金を出しているのだと。

 その一方で、チャドの言うことも理解できる。
 鉄鉱石を掘るために山が切り開かれ、地面が掘り進められる。動物たちが暮らす場所が脅かされているのも事実だ。

(僕の力を使うことで、ベンソン伯爵がこれ以上の採掘をやめてくれるなら、国にとってはいいことかな……)

「オリバー?」

 突然後ろから声をかけられて、オリバーはびくりと体を震わせた。振り向くとフィオナがそこにいた。

「は、母上」
「おいしいお菓子があるのよ。こっちで食べない?」
「あ、……はい」

 フィオナがわざわざ誘いに来るのも珍しい。断るのも何なので、ついて居間に行くと、底にはお菓子の皿が用意されていたが、他には誰もいなかった。

「アイラは?」
「今は忙しいみたい。先に私たちで食べましょう?」

 フィオナが侍女にお茶を頼み、すぐに湯気の上がったカップが並べられる。いつもならそのまま侍女が控えているのに、今日はすぐに席を外してしまった。
 母と二人きりになることなどほとんどないオリバーは、なんだか不思議な気分だ。

「お父様も視察地で元気にやっているそうよ」
「連絡があったの?」
「ええ。まだいろいろ調べることがあるから、滞在が長引くらしいわ。とりあえずここ数日は地震もないそうなので安心だけど」

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