8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
双子が一歳半の頃、当時は王太子だったオスニエルには、側妃を迎えろという王命があった。反発していたオスニエルだったが、相手である公爵令嬢ジャネットは、王の命を受けて王城にやって来てしまったのだ。
実はジャネットの目的は、オスニエルへの復讐で、彼女は王都で洗脳騒ぎを起こしたのだが、それを解決する過程において、アイラとオリバーの能力も発覚した。
アイラは人ならざるものが見える探知能力、オリバーには他人の力をより強力にする増幅能力があるらしい。それ以外にも、ふたりが共鳴し合えば、特別な力を発揮するようだ。
当事者であるジャネットが言うには、ふたりから発せられたのは浄化の力だったらしい。そのおかげで、ジャネットは亡き夫ユーインの遺志を知り、自分の気持ちを伝えることもでき、凝り固まっていた憎しみの気持ちが、不思議と晴れていったのだという。
(ふたりには特別な力がある。しかも、それは俺には理解しがたい、非現実的な力だ)
武に長けたオスニエルは、人間相手なら負け知らずだ。だが、相手が聖獣となるとそう簡単にはいかない。
(自信があろうがなかろうが、守るしかないのだがな)
ふう、とため息を落とし、気になっていたことを聞いてみた。
「……なあ、今まで聞けずにいたが、リーフェの母親は亡くなっているのか?」
『そう言っていたと思うが……昔のことだからよくは覚えていないな』
リーフェには、風を操る能力と、人ならざるものを感知する力、加えて増幅能力がある。
この増幅能力というのが、ドルフ曰く、とても珍しいものらしい。
聖獣というのは力の強さで立ち位置が決まる。だから、力の弱い聖獣にとって、リーフェは身内に欲しい能力の持ち主なのだ。
『そういう能力持ちだからな。母親は、あいつの存在を隠すことに必死だったのではないだろうか。まして、リーフェは常識がないから危なっかしい』
「そうだな」
『そのリーフェをひとり置いて、意図的にいなくなることはないだろう。今、湖にいないとすれば、まあ死んだのだろうな』