8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3

* * *

 ドルフは、ショックでパニック状態になっているオリバーを、後ろ足で蹴り、気絶させた。
そして背中に乗せ、チャドを睨む。

『お前にも聞きたいことがある。ついてこい』
『……わかった』

 チャドは迷いを見せつつも頷き、ドルフの背中へ乗ってくる。
 再び空に飛びあがり、今は静かに夜の眠りに落ちているベンソン伯爵領を眺めながら、ドルフは後悔する。

(俺が、止めてやるべきだった。オリバーが地震を起こして喜ぶはずなどないのだから)

 優しい少年の心に、今日の出来事がどれほどの傷をつけたのか、想像すると胸が痛い。
 ドルフ自身は、人間どもがどうなろうと構わない。自分の気に入っている人間が無事に元気でいればそれでいいのだ。
 今ドルフが人間の味方をしているのは、フィオナが王族として国民を大切にしたいと言っているから仕方なくだ。

『……かみ殺してやりたいくらいだ』
『我をか?』
『当たり前だ。オリバーが望まないほどの惨劇を起こして、何をしたかったんだ?』
『あの土地は、我の力で守っている。どうやらその一部が引き寄せられて我のもとに戻ってしまったようだ。……悪気はない。あそこまでの惨劇を起こすつもりじゃなかった』

 チャドは肩を落とす。
 どうやらチャドにとっても、先ほどの力の放出は予想外ではあったようだ。

『この土地の守りも引き直さねばならん』

 ドルフはチャドの行動が引っかかる。
 かつてここが聖域と呼ばれるほど聖力にあふれた土地だったとして、チャドがそこを取り戻したいと願うことは理解できる。

 しかし、現在のこの土地は、聖域には程遠い。本当に聖獣が守っていたならば、その姿を失うことなどなかったはずだ。

「すでにここまで荒れた土地を、聖域と呼ばれる状態まで戻すことは不可能だろう? 鉄鉱石の採掘をやめさせたいのは、これ以上、土地を荒らさせないためだと理解できるが、守りを引き直す意味はなかろう」

 チャドはしばらく黙っていた。ドルフは返事を待たずに続ける。
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