8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
『元の聖域を守れぬほど弱くなったお前には、この土地に対して口を挟む権利などないのではないか? 支配者が変われば、土地もそいつのものだ。力が絶対である世界で生きている俺たちは、力をなくせば敗者に変わる。この土地が壊されようとも、口を挟む権利などない。お前が弱くなったことがすべてだ』
『お前に何が……』
ドルフが言い放つと、チャドは一瞬反論しようとしたが、やがて諦めたように黙った。
『……オリバーは、大丈夫か?』
『大丈夫じゃなければ、お前を殺してやる』
ドルフは殺意を込めてそう言うと、チャドは毛を逆立てたまま、体を丸めて黙り込んだ。
* * *
ガタンとなにかがぶつかるような音がして、フィオナは浅い眠りから覚めた。
暗闇の中、淡い銀色の光が見えて、フィオナは飛び起きる。
「ドルフ?」
よく見るとドルフの背中にはオリバーが乗っていた。だらりと手を伸ばしているところを見ると、意識はなさそうだ。
「どうしたの? オリバーまで?」
『無理するな。そんなにすぐ動けないだろう』
駆け寄ろうとしたフィオナを止め、ドルフは彼女のベッドの空いたスペースに、そっとオリバーを下ろした。
「一体どうしたの? オリバーは」
『事情はゆっくり説明する。とりあえずはオリバーを寝かせてやってくれ』
オリバーは夢を見ているのか、時々ひどく眉を顰め、冷や汗を流している。
フィオナは頷き、オリバーの服の首元をはだけさせ、呼吸を楽にした。汲んである水でタオルを濡らし、砂埃で汚れた彼の顔を拭く。
「なぜこんなに苦しそうなの?」
『ショックな場面を見たんだ。パニックになりそうだったから眠らせたんだが』
「夜の散歩で、いったいどんなショックが……」
その時、フィオナは部屋の隅にいる小さな生き物に気が付いた。
「……ネズミ?」
そこでようやく、チャドの存在が目に入る。淡く金色に光る体毛は、聖獣の証だ。
「聖獣なの?」
『ああ。チャドという。こいつがそもそもの元凶だ』
ドルフが始めた説明を、フィオナは黙って聞いた。
ふたりが、夜の散歩中にチャドを拾ったこと、オリバーが、チャドに興味深々だったこと。ベンソン伯爵領の地震はチャドが起こしたものだということ。そして、チャドに協力を求められ、やや強力な地震を起こしに向かったこと。
『お前に何が……』
ドルフが言い放つと、チャドは一瞬反論しようとしたが、やがて諦めたように黙った。
『……オリバーは、大丈夫か?』
『大丈夫じゃなければ、お前を殺してやる』
ドルフは殺意を込めてそう言うと、チャドは毛を逆立てたまま、体を丸めて黙り込んだ。
* * *
ガタンとなにかがぶつかるような音がして、フィオナは浅い眠りから覚めた。
暗闇の中、淡い銀色の光が見えて、フィオナは飛び起きる。
「ドルフ?」
よく見るとドルフの背中にはオリバーが乗っていた。だらりと手を伸ばしているところを見ると、意識はなさそうだ。
「どうしたの? オリバーまで?」
『無理するな。そんなにすぐ動けないだろう』
駆け寄ろうとしたフィオナを止め、ドルフは彼女のベッドの空いたスペースに、そっとオリバーを下ろした。
「一体どうしたの? オリバーは」
『事情はゆっくり説明する。とりあえずはオリバーを寝かせてやってくれ』
オリバーは夢を見ているのか、時々ひどく眉を顰め、冷や汗を流している。
フィオナは頷き、オリバーの服の首元をはだけさせ、呼吸を楽にした。汲んである水でタオルを濡らし、砂埃で汚れた彼の顔を拭く。
「なぜこんなに苦しそうなの?」
『ショックな場面を見たんだ。パニックになりそうだったから眠らせたんだが』
「夜の散歩で、いったいどんなショックが……」
その時、フィオナは部屋の隅にいる小さな生き物に気が付いた。
「……ネズミ?」
そこでようやく、チャドの存在が目に入る。淡く金色に光る体毛は、聖獣の証だ。
「聖獣なの?」
『ああ。チャドという。こいつがそもそもの元凶だ』
ドルフが始めた説明を、フィオナは黙って聞いた。
ふたりが、夜の散歩中にチャドを拾ったこと、オリバーが、チャドに興味深々だったこと。ベンソン伯爵領の地震はチャドが起こしたものだということ。そして、チャドに協力を求められ、やや強力な地震を起こしに向かったこと。